秋田駒ヶ岳、乳頭山 |
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梅雨の晴れ間を期待して北東北へ。目指すは花の名山です。 | ||
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@期間 | 2004/6/12〜14(2泊3日) | |
A同行者 | Mackeyさん | |
Bアプローチ | 第1日:秋田新幹線・田沢湖駅よりバスで、鶴の湯温泉旧道口へ 第2日:乳頭温泉バス停より、田沢湖高原温泉を経て駒ヶ岳八合目まで 第3日:乳頭温泉バス停より、田沢湖駅までバスで |
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Cルート | 第1日:鶴の湯温泉旧道口バス停[680m]−鶴の湯温泉[650m]−(小白森手前)蟹場分岐点[1070m]−(蟹場・田代平分岐)[1050m]−大釜温泉[780m]−孫六温泉[泊] 第2日:駒ヶ岳八合目[1290m]−阿弥陀池[1530m]−男岳[1623m]−阿弥陀池−男女岳[1637m]−阿弥陀池−横岳[1580m]−湯森山[1472m]−(笹森山・休暇村分岐)[1380m]−国民休暇村[770m]−大釜温泉 第3日:大釜温泉−(孫六手前)分岐−田代平[1260m]−乳頭山[1478m]−(笊森山・千沼ヶ原分岐)−千沼ヶ原[1360m]−(分岐)−乳頭山−黒湯分岐−黒湯温泉[820m]−乳頭温泉バス停 (注:地図記載以外の標高は、読み取った値です) 最高点:秋田駒ヶ岳山頂(男女岳・標高1637m,難易度:☆☆☆★★) |
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D天候 | 第1日:晴 第2日:曇ときどき晴 第3日:晴 |
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E所要時間 | 第1日:約5時間(歩行+休憩時間) 第2日:約8時間(歩行+休憩時間) 第3日:約7時間半 |
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Fポイント (第1日) |
・2年前の梅雨時に八甲田山に登った記憶は強く残っていました。再訪も考えましたが、前から行きたいと思っていた花の名山・秋田駒ヶ岳に行きたい気持ちが強くなってきました。考えてみれば、先月に姫神山に登ったばかりですが、自然と東北に惹き付けられる自分がいました。 ・新幹線で北の大地を目指します。こまち号に乗れば2時間余りで岩手山が見下ろす盛岡まで来ます。そこからはローカル線のような路線で岩手山の南麓を走り、田沢湖駅に下り立ちました。夏至近い太陽がサンサンと降り注いでいました。 ・バスで乳頭温泉方面へ。秋田駒ヶ岳の山腹を巻くように登り続ければ、ブナ林の中を走るようになって、鶴の湯温泉旧道口で下車します。2年前と同じように、初夏の花、タニウツギが歓迎してくれました。そして、エゾハルゼミのセミしぐれもまた、2年前と同じでした。 ・ブナの二次林を抜け、橋を渡って少し登れば鶴の湯温泉が現われます。いい雰囲気の中に建っていますが、観光客の多いこと多いこと。たかだか40Lのザックを背負っているだけで周囲の視線が冷たい。温泉の案内人から、「どこを歩くんですか?」と尋ねられて、返答に窮してしまいました。 ・ブナのそれほど目立たない雑木林を登っていくと、マイヅルソウやズダヤクシュが沢山咲いていました。少し登ったところで樹林が途切れて草原を歩きます。ここから先が本番で、目の前にブナ林が広がっていました。小白森へ向けての登りで立派なブナが続きました。セミしぐれは相変わらずものすごく、かなりうんざりさせられます。 ・蟹場への分岐に着いて時間を確認します。やっぱり小白森までは難しいので、蟹場方面へと折れました。 ・ここからはひたすらブナ林の中を歩きます。ネマガリダケを採取するおじさんやおばさんに会ったりしながら進みます(熊が出るよ、と言われたので緊張しながら)。確かにこの辺は笹薮が濃いです。とびきりの大木は少ないですが、濃密なブナ林が続きました。蟹場へ折れるポイントでしばし休憩。 ・ここからの下りは滑りやすい道が続き、何度かコケてズボンを汚しながら下って行きます。目の前の樹間から秋田駒や田沢湖が見えるようになると、下り坂が急になってきて、やがて沢音が大きくなってきました。 ・ひたすらブナ林の登山道が続き、下り立ったところが大釜温泉。ここから今夜の宿の孫六温泉は目と鼻の先でした。 ・野趣満点の露天風呂に浸かり、ネマガリダケに舌鼓を打ち、日本酒をチビリチビリと飲んで最初の夜は更けました。5時間ほどの歩きにもかかわらず、疲れが出てきました。 |
※印の写真はクリックして拡大表示できます。 |
(第2日) | ・この日はまず、乳頭温泉のバス停から田沢湖高原温泉で乗り換えて駒ヶ岳八合目まで一気に登ります。乳頭温泉バス停から鶴の湯温泉入口あたりまでのひたすら続くブナ林が見事。そして、上に行くほど雲が多くなってきて、八合目一帯は曇ベースでした。 ・既に樹林帯を抜けて潅木帯を登っていくと、オオバキスミレが所々に見事な群生となって咲いていました。タニウツギやムラサキヤシオも咲いていて、雪国の初夏は色鮮やかな花々が多いです。サンカヨウも初めて見ることができました。雪渓を抜けて更に登っていくと、北西方向の展望が開けて森吉山が見えていました。 ・コイワカガミやミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ、ミツバオウレンなども群生が見られます。タカネスミレは秋田駒の花とか。男女岳をぐるりと巻いて登っていけば眼下に田沢湖も見ることができました。残念なのは次々と雲が押し寄せて時折視界が閉ざされることでした。 ・男女岳と男岳の間の鞍部は湿原の様相で、チングルマとミヤマキンバイの群落です。ヒナザクラも咲き始めていました。分岐で男岳を目指せば、ムーミン谷と1970年に噴火した女岳を望むことができました。幅の狭い尾根を登っていけば、シラネアオイも群落となって現われます。時折視界が閉ざされ時折陽が射す状況の中で、男岳の山頂へ。この日は日曜日とあって山頂はハイカーでごった返していました。 ・それにしても男岳の山頂から見る景色は、火山地形がふんだんに盛り込まれて興味が尽きません。規模なら鳥海山が上だけど、火山的なことについては同じように面白いです。来た道を引き返して阿弥陀池の畔で、宿でつくってもらったおにぎりを食べました。陽が陰るとかなり寒かったです。 ・食事の間、男女岳には雲が掛かっていたので少しばかり時間をとってから、最高峰の男女岳を往復しましたが、視界は閉ざされたままだったので、とりあえず最高点に登っただけです。 ・阿弥陀池からは横岳を経て焼森を目指します。この辺りは景色が目まぐるしく変化します。焼森のあたりは砂礫地でコマクサが芽を出し始めていました。そこから、笹森山へは向かわずに千沼ヶ原方面に進路を取りました。 ・緩く下ってから長い登り返しがありました。太陽を背中に受けてチリチリと焼かれるような感じでしたが、時折陽射しも遮られ、足元にはツマトリソウ、ミヤマキンバイ、ミツバオウレンが目立ち、それ以外にも数多くの花々が咲いていたので、疲れも紛れました。 ・湯森山まで来たら西に折れて、笹森山方面を目指します。このあたりはハイマツや潅木の中を歩きます。人が少なく、脇から動物の逃げるガサガサ音が聞こえたりして、ちょっぴり不安でした。笹森山直下の分岐で国民休暇村へ向けて下りに入りました。 ・遠くに特徴的な形の乳頭山を見ながら、眼下のブナ林へ向けて下って行きます。所々に雪渓が現われてサンカヨウやショウジョウバカマ、そして大好きなシラネアオイを眺めながらの下りが続きました。ブナ林が迫ってきて、やがて突入しました。 ・ものすごくワイルドなブナ林が続きます。折から雲が覆ってきて暗くなってきました。今にも熊が出そうな雰囲気ムンムンで見事な「ブナ太郎」を探す気持ちも不安にかき消されがちです。ときどき「よいしょっ、よいしょっ!」と大声を張り上げながら下って行きました。 ・熊は出てこないけど、周囲でザーッと音がしてきました。やばい、雨じゃん。ポツポツと降ってきてこれはヤバイと合羽を着こんで下ることにしました。それでも、見事なブナを見つけては写真を撮っていましたよ。 ・息苦しいほどにワイルドなブナ林がしばらく続いたと思ったら、辺りが急にサッパリとした雰囲気に変わってきて、どうやら二次林に入った模様。雨も大降りすることなく止んできて、辺りが明るくなってきました。こうなったら乳頭温泉のスキー場までは快適な下りに変わります。やがて陽射しも戻ってきて、ブナ林が輝き始めました。 ・下り坂は緩やかになってきて平坦なブナの道が続きました。やがて沢沿いを歩くようになってスキー場の末端に飛び出しました。スキー場の中は退屈だったけど、車道に下りたら今宵の宿、大釜温泉までの道はやはりブナ林の中。温泉とビールが待っています。 ・大釜温泉は上品な民宿。随分と暑い露天風呂に浸かりました。風呂上りのビールは最高です。またまた美味しいネマガリダケにありつけました。食事もボリューム満点で、8時間の行程で絞られた身体はあっという間に復活です(^^;;; |
※印の写真はクリックして拡大表示できます。 |
(第3日) | ・この日はカンカン照りで始まりました。乳頭山に登るので孫六方面へ向けて歩きます。身体が少し重いなー、初日と2日目の宿を逆にすればよかった。セミ時雨もものすごいです。孫六のすぐ手前で左に折れてブナ林の中の登りが始まりました。 ・陽射しを浴びて輝くブナ林、大木も多くなかなかのワイルド感です。乳頭山に向けての登りは着実で、アップダウンのない素直な登り勾配が続きました。やがてブナ林の背が低くなり、アオモリトドマツが混じるようになって、田代平に飛び出します。行く手には乳頭山が聳えていました。 ・田代平避難小屋で小休止したら、乳頭山へ向けての登りを行きます。辺りはハイマツ帯となって、右手には昨日登った秋田駒ヶ岳が田沢湖を従えていました。振り返れば、田代平の湿原の向こうに大白森、その向こうに森吉山と鳥瞰的な風景が展開していました。その右手には、八幡平の稜線が続き、葛根田川の源流域には広大なブナ林の広がりを見て取れました。 ・足元には高山植物が咲き乱れる中、着実に高度を上げて、乳頭山の頂に着きました。秋田駒から笊森山、そして東には雄大な岩手山が聳えていました。この辺りの地形の妙を見ることができました。本当に素晴らしい眺めでしたが、ここがたどり着く場所ではありません。先を急ぎます。 ・乳頭山から一旦下って行きます。タカネスミレがひときわ多い場所では、辺りが黄色く染まっています。ハクサンチドリやシラネアオイも点々と咲いていました。鞍部まで下りてそこから緩く登り返せば、笊森山との分岐になり千沼ヶ原へと進路をとります。期待に胸が膨らみます。雪解け水が流れる小さな沢や小雪渓を渡りながら進みます。 ・突然、目の前に大きな雪渓が現われました。対岸が随分遠く、しかも随分と下から始まっています。緩い下り傾斜の先に一気に落ち込んでおり、これは緊張します。軽アイゼンも持っていないので、ストックを頼りに恐る恐る運ぶと、最後に10mほどの高度差を下らなければなりません。どこから下りようか迷った末、後ろ向きにステップを刻みながら下りました。 ・そこからは所々に現われる木道を伝って行けば、やがて目の前が大きく開けました。どうしても辿り着きたかった「千沼ヶ原」。ついにやってきました。 ・文字通り無数の池塘を散りばめた湿原でした。無数のヒナザクラが咲き乱れ、風に揺れています。向こうに岩手山が頭をのぞかせ、青空を雲が流れています。期待通りの光景が展開していました。まさに「桃源郷」なる表現がぴったりの世界でした。 ・写真撮影と食事に時間をかけました。そして、心行くまでそこにいたかった・・・しかし、乳頭山を越えて乳頭温泉まで下山する必要があります。できれば温泉にも入りたいし・・・そう思いながらも、世俗につながる一歩を踏み出すことにしばらく躊躇していました。また来るよ・・・心の中でつぶやきながら、来た道を歩き始めます。 ・あの雪渓を渡ります。来るときには気付かなかったのですが、亀裂が何本か走っています。それどころか、ある場所では踏みしめた瞬間にズズッと20cmほど潜りました。これは危ない・・・亀裂を避け、黒っぽい筋の見られる部分を避けつつ、祈るような気持ちで渡りました。 ・目の前に堂々たる姿の乳頭山が現われました。相変わらずの晴天で、陽射しは容赦しません。乳頭山頂から、最後の展望を楽しみます。岩手山の姿は立派の一言です。その右奥に、1ヶ月前に登った姫神山の姿を認めたときには嬉しさがこみ上げてきました。更に、南東の方角へ目を転じると、早池峰の姿も認識できました。一方、北には原始のブナの森が広がっていました。 ・下山にかかります。田代平への道を分けて黒湯へ下ります。田代平の避難小屋がしばらく眼に入っていました。崩れやすい道を高度を下げていくと、ブナ林に入りました。その中を急坂が続いていました。 ・やがて傾斜が緩くなってきました。こちらのコースはブナ林はそれほど密度が濃くないようです。ふと見ると、両側にはネマガリタケが繁茂しているのですが、切り取ったものが1本落ちていました。なるほど、こうやって切るのか。そんなわけで、登山道脇に生えている数本を”失敬”します。帰ったら味噌汁でも作ってみよう(実際に作ってみたら、なかなか旨かった)。 ・一本松温泉跡を過ぎ、川沿いに下り続けると、やがて平坦になってきて黒湯に到着しました。16時頃です。よし、17時台のバスに乗ることにして温泉に浸かろう、と硫黄の強い温泉に浸かりました。3日間の山旅は、1日1日はそれほどハードではなかったものの、疲れが蓄積していました。露天風呂からブナに覆われた斜面を見上げました。 ・花よし森よし展望よし温泉よし・・・夢のような3日間、梅雨の合間の北東北の山旅をゆっくりと反芻しました。風呂から上がり最後の乳頭温泉バス停までの道は噛みしめるようにゆっくりと歩きました。いや、疲れて速く歩けなかったというのが正解かもしれません。せみ時雨の中、孫六温泉を抜けて、乳頭温泉のバス停につきました。 |
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登りはじめは見事なブナ林 |
田代平からの乳頭山 |
※乳頭山頂から望む岩手山 |
雪渓を抜けて千沼ヶ原へ |
千沼ヶ原の向こうに八幡平 |
※咲き乱れるヒナザクラ(千沼ヶ原) |
青空を映す池塘群と遠く岩手山 |
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ミズバショウも咲いていた |
乳頭山へ向けて引き返す |
乳頭山からの八幡平 |
ムシトリスミレ |
※ハクサンチドリ |
大白森、その向こうに森吉山 |
※陽射し降り注ぐブナ林の中 |
ベニサラサドウダン |
G総括 | ・乳頭温泉郷を取り巻く山々を歩き回った3日間でした。そこに息づく自然のスケールを全身で感じた3日間でした。 ・まずは、花の多さに驚かされました。ここに記載した花々は多くの場合、場所を特定せずに至るところに見ることができました。本当に美しい花々です。中でも初めて見るハクサンチドリとシラネアオイには強い印象を受けました。秋田駒ヶ岳が花の名山といわれる所以でしょうか。そして乳頭山も秋田駒に劣らない素晴らしさでした。 ・やはり3日目に辿り着いた千沼ヶ原は、期待していた通りの素晴らしさ。あの無数の池塘は、10年ほど前から写真で知っていたので、いつかは踏みたいと思い続けていました。足を伸ばした甲斐がありました。 ・天候という点では2日目は今ひとつだったのが残念なところ。3日目の乳頭山は晴れていたので抜群の展望が楽しめました。岩手山や、北側に広がる広大なブナの森が印象的でした。秋田駒からはどんな展望になったのかな、と思わずにはいられないです。 ・ブナ林については、主目的の花のため、今回はそれほど期待していませんでした。というか、調べていなかったのでした。「ブナの山旅」の本に「乳頭温泉郷」「葛根田川源流域」の2つの項目があって、かなり評価が高いことを前日に知ったのでした。知ってよかった。特に、笹森山から国民休暇村へと下るコースのワイルドなブナ林が強烈でした。 ・梅雨時の北東北の素晴らしさをまたまた満喫できました。これだからやめられない・・・。来年の候補地へと思いが巡るのでした。(焼石連峰、和賀山塊、森吉山、八甲田〜十和田、八幡平etc.もう数え切れないほどです!) |
H気付事項 | ・鶴の湯温泉から大白森方面への道は、ぬかるみが多いので、スパッツは必携です。笹森山から休暇村へと下る道もスパッツあったほうがいいかもしれません。 ・阿弥陀池避難小屋の公衆トイレは使用禁止になっていました。避難小屋のトイレ(1基のみ)は使えました。この状態が続くようなら、休日の昼食時にはかなり待たされることを覚悟しなければなりません。 ・笹森山から休暇村へと下る道の上部にはガレ場や崩壊地の縁を通過するところがあります。慎重に歩くことです。 ・田代平避難小屋は、なかなか素晴らしいロケーションにあります。乳頭温泉さえなければ泊まりたくなります。小屋にはトイレが2基ありました。 ・乳頭山から千沼ヶ原へと行く道のうち、笊森山を経ずに直接行く道は、上に書いたとおり大きく深い雪渓を渡ります。特に、千沼ヶ原へと向かう方が下り勾配で大変だし、亀裂が見分け難い。千沼ヶ原から歩いてくる人には、必ず雪渓の状態を尋ねること、一旦引き返して笊森山を経由する選択もあることを念頭に入れて歩くことが必要です。 ・残念だったのは、至る所で登山道の侵食が進んでいたこと。自分も自然を満喫しながら、ダメージを与え続けて歩きました。木道整備も行われていますが、なかなか追いつきません。コンクリートを流して固めてしまわなければ、物理的機械的には元に戻すことはできないくらいです。しかし、仮にそれができたとしても、今度は別のインパクトで植生が大きく影響を受けることは明らかです。全国の至る山々で共通の問題を今のまま地域の少数の熱心な人の手に押し付けずに、国の財産をどう守るかという観点で取り組む時期が来たのではないでしょうか。後世に残すためにやるべきことの重大さを実感した山旅でもありました。 |
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