西沢渓谷(2回目)

冬の渓谷。その厳しい表情に触れてみたいという思いが湧き上がり、この渓谷を再び目指すことになりました。
白い雪に包まれて、花崗岩のナメとコバルトブルーの釜が連なる中を水が流れていました。

西沢渓谷の積雪した沢を水が流れる

@期間 2003/1/19(日帰り)
A同行者 なし
Bアプローチ JR中央線・塩山駅より西沢渓谷入口までバス
Cルート 西沢渓谷入口バス停[1140m]−二俣吊橋[1170m]−三重の滝[1210m]−人面洞[1260m]−七ツ釜五段ノ滝[1300m](冬季往復コース)

最高点:七ツ釜五段ノ滝付近・標高1300m,難易度:☆☆☆★★

D天候
E所要時間 約4時間半(歩行+休憩時間)
Fポイント ・「西沢渓谷」この名前が出てきたのは、前週の山行で払沢ノ滝を見たことがきっかけでしょう。冬の渓谷を見てみたいという潜在意識が、呼び醒まされたような感覚でした。

・鈍行を乗り継いで7:51に塩山駅まで来ました。8:08発のバスに乗ります。笛吹川を上流へと向かえば、見慣れた景色が雪化粧していて、新鮮でした。西沢渓谷入口はひっそりとしていて、バスでここまで来たのも僕ともう一人の登山者だけでした。

・西沢渓谷に向かって歩きます。もう一人の登山者は重装備なので、きっと甲武信ヶ岳に登るのでしょう。やがてナレイ沢橋たもとの休憩所に着き、ここでアイゼンを装着しました。この辺りで、既に雪は15cmほどありました。

・二俣吊橋を渡っていよいよ西沢渓谷が始まります。最初のうちは平凡な斜面のトラバースが続きます。所々にアイスバーンがありますが今回は6本爪アイゼン。4本爪とは効きが違います。

・大久保ノ滝を過ぎて階段を上れば、行く手にスラリと背の高いブナの木が立っていました。前回ここを訪れたのは新緑の時期。憶えています。「また会えたね」お互いにそう言っているような気分になりました。

・三重ノ滝を過ぎると遊歩道は幅が狭くなってきました。雪も深くなってツルツルのアイスバーンは減ってきました。新しい鎖の手摺りが増えているので、安心して通れます。そう思いながら、あるとき、谷側の足を置きました。ズボッ!慌てて重心を山側の足に戻しました。一握りほどの雪が斜面を流れて沢に吸い込まれていきました。

・路肩に注意しながらそれまでよりも慎重に歩いて行きます。沢の水は花崗岩のナメとコバルトブルーの釜を縫って、勢いよく流れています。雪が増えてきて所々で川面を覆っていました。雪の隙間に激流が見えたりしました。曇り空で光が差し込みません。しかし、雪が多いためか、凍りつくような世界ではなく、むしろ温かみを感じさせる雰囲気でした。

・上流へと歩いて行きます。深い谷の奥底、見上げる空は天窓のようです。人面洞、母胎淵、甌穴と過ぎて方杖橋を渡れば、いよいよ七ツ釜五段ノ滝へ向けて最後の登りとなります。深い雪の斜面、積雪は50cmはあります。力ずくで踏ん張って登れば、行く手の橋の上にカメラを持った人がいました。

・七ツ釜五段ノ滝と対面しました。何故だろう?それほどの感慨がなかったのです。凍結がほとんどなかったこと、周囲が白壁のように白一色だったこと、下から2段目に倒木が横たわっていたこと、曇り空で光と影のコントラストがなく単調だったこと・・・目の前の景色を受け入れるのをためらっている自分がいました。食事をとって、その後で一応の写真を撮って、その場を後にしました。

・沢沿いの道を引き返します。時折、登ってくる人とすれ違います。足元に注意しながら、淡々と歩きました。人面洞付近で一旦休憩。三脚を立てて写真を撮りました。この辺りが一番居心地のよい場所かな。そう考えていたら、やっぱり俗化された観光地も冬はいい場所だと思うようになりました。

・再び歩き始めました。沢音を耳にしながら歩いていると、いつしか歌が駆け巡っていました。今日も独りだな・・・ま、いつものことか・・・。そんなことを思いながら、三重ノ滝を過ぎると、あの背の高いブナが視界に入ってきました。また来ようかな、そんな気持ちで何度も振り返りました。

・二俣吊橋を渡り、ナレイ沢橋の休憩所まで戻ってきました。ナレイ沢橋から上流を眺めれば、雪の渓谷の奥に、木賊山へと続く鶏冠尾根を望むことができました。壮大な姿でした。

G総括 ・今回は「冬の渓谷を歩いた」ということが一番の収穫でした。元より危険だと近づかなかったのです。その意味で、前週の払沢ノ滝に寄ったのが大きなきっかけになりました。

・しかし、漠然と写真を撮ろうと考えていたことに対しては、考えが甘かったと思います。元々渓谷の写真が苦手だと思っていましたが、事前に撮影対象を強く意識しないとダメなようです。次回からはもう少しイメージを持って訪れたいと思いました。

・沢というのは、水だけではないのですね・・・。岩や木々、そして射し込む光のすべての要素があって魅力が出てくるものだと思いました。また新緑や紅葉の時期に訪れたいと思いました。

H気付事項 ・冬季の西沢渓谷は「対面通行」です。安全な場所ですれ違うように、お互いに協力し合う必要があります。

・両岸が急斜面です。降雪直後などは、雪崩の危険性も考慮に入れる必要がありそうです。特に、急角度で回り込む所(人面洞付近など)は要注意です。

・比較的アップダウンが小刻みにあって、下るところでは要注意。凍結がなくても踏まれた道は滑り台と化しています。言うまでもありませんが、アイゼン必携です。

※印はクリックすると拡大表示されます。

大久保の滝を過ぎた高巻きに立つブナの木です。「また会えたね」と歓迎しているようでした。

背の高いブナの木

深い雪の中を勢いよく水が流れていました。※クリックすると拡大表示されます。

※七ツ釜五段ノ滝

両岸からせり出した雪で、水面が隠された場所もありました。

雪に覆われた岩を縫って激流が走る
(人面洞付近)

ナレイ沢橋から上流を眺めました。鶏冠尾根はいつ見ても素晴らしいです。

ナレイ沢橋より遠く鶏冠尾根
(中央の白いラインは吊橋の積雪)

 

 


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