栗駒山(2回目)

紅葉に展望、ブナ林と温泉。いくつもの魅力をもつこの山に、8年ぶりに訪れる機会を得ました。

斜光線に草紅葉が輝き、御沢と大地森が立体的に浮かび上がっていました。

草紅葉の斜面(中央コース上部より俯瞰)

@期間 2002/10/13〜14(1泊2日)
A同行者 ネット仲間のご夫妻
Bアプローチ 行き:JR東北新幹線・一ノ関駅より須川温泉までバス

帰り:温湯よりJR東北新幹線・くりこま高原駅までタクシー

Cルート 第1日:須川温泉−名残ヶ原−昭和湖−栗駒山−(中央コース)−いわかがみ平

第2日:世界谷地湿原入口駐車場−第一世界谷地−第二世界谷地−変則十字路−大地森下部のブナ林−変則十字路−林道終点−湯ノ倉温泉分岐−温湯

(最高点:栗駒山頂・標高1627m,難易度:☆☆★★★)

D天候 第1日:快晴

第2日:晴

E所要時間 第1日:約3時間15分(歩行+休憩時間)

第2日:約6時間半(歩行+休憩時間)

Fポイント ・苛立ちは頂点に達しようとしていました。バスは申し訳程度に動いてはすぐに止まります。約束の時間は午後1時。あと30分もすれば正午です。この調子だといつになるのかわかったものではありません。運転手にぶつけても仕方ないけど、もう降ろしてくれ、そんな心境でした。

・ようやく着いた須川温泉。時間は12時まであと5分でした。食事はバスの中で済ませています。とにかく急ぐしかないと、猛烈なペースで歩き始めました。しかし、観光客に行く手を阻まれます。こいつらが車道の両脇に車を止めるからこんなことになるんだ、人の心の醜さとわかっていてもやり場のない怒りのエネルギーは強引な追い抜きへと駆り立てて行きました。

・須川温泉一帯は紅葉が見られました。しかし、近づいてみるとやや過ぎ加減です。それでも名残ヶ原が見渡せる場所に来たとき、鮮やかな光景が目に飛び込んできました。後悔はしたくないので写真を撮りました。

・名残ヶ原は一面の草紅葉。逆光のおかげで、黄色がまぶしく映りました。太い三脚を抱えたカメラマンも見かけました。手早くチャッチャッと写真を撮って、再び歩き始めました。

・目の前には栗駒山のゆったりとした稜線が見えています。思えば8年前、初めての単独行に選んだのがこの山でした。あのときは軽登山靴すら履かずに、夏の日射にも消耗して、ここから見た山頂がとてつもなく高く感じられたのでした。あと1時間以内に頂上に立つ。今、同じ山頂の姿を見て、それが不可能ではないように思えました。気力が満ちていました。

・上り坂に入り昭和湖から流れてくるゼッタ沢を飛び石伝いに渡って、なおもグイグイと行きます。次々に人を追い抜いて火山ガスが湧き出る沢沿いに登れば、昭和湖に着きました。もうこのあたりまで来ると紅葉は完全に終っていました。8年前にはコバルトブルーの水がとても印象的でしたが、今回は深い緑色をしていました。

・昭和湖を出発すると登りが続きます。傾斜が強まってきますが、大した登りではないことを経験で感じます。グイグイ登ってハイマツ帯に入ると、背後に焼石連峰や早池峰を望むことができました。

・湯浜温泉からの道を合わせると山頂へ向かって最後の登りです。さすがに1時は回りました。1時15分、山頂に着きました。目の前に、到着を待っていた夫婦の姿がありました。快晴の空の下で、1年ぶりの再会となりました。

・ほっとしたと同時に、どっと疲れが覆ってきます。1時間20分で登りきったのですから。それよりも、この爽やかな秋の空の下で、再会できた喜びがありました。

・ひと息ついてから、欲しいままの展望を確かめます。焼石岳の奥に岩手山が頭をのぞかせています。その東に北上山地の雄・早池峰が見えます。西に目を転ずれば、裾野を広げた鳥海山が颯爽としています。そこから南に向かって、月山、朝日連峰、手前に神室連峰、そして遠くは飯豊か。南には蔵王連峰が・・・まさに東北地方の名だたる山々が見渡せました。

・記念写真を撮って3人で下山にかかります。当初は大地森コースを予定していましたが、遅くなったので、中央コースに変更することにして、歩き始めました。

・草紅葉の斜面が広がります。眼下には御沢が刻む谷間と大地森が、斜光線に浮かび上がっていました。少し下るとハイマツが広がる緩斜面。ここから振り仰ぐ栗駒山が堂々としていました。左手には東栗駒山が頭をもたげており、稜線のコースを歩く登山者の姿も見えました。

・登りの慌ただしさもどこへやら・・・3人で楽しい会話がはずみます。ゆっくりと下って行きます。何度も立ち止まって、写真タイム。

・それにしても午後3時近くになろうとしているのに、登山者がどんどん登ってきます。スニーカーの人も結構多い。晴天の中、満足そうな表情を浮かべながら登ってくるのが印象的で、地元の人に愛されている山であることを感じました。

・道がコンクリートに変わると、山の姿は低木に邪魔されて見えなくなりました。紅葉は遠くからは綺麗に見えていても、近寄ると過ぎていました。下り続けて、すぐにいわかがみ平まで来ました。こちらも駐車場が満車で、相当の渋滞でした。バス停に立つと、案内役の人がいてここまでここまで来れないので歩いて迎えに行くようにと言われました。5分ほど歩いたところで登ってくるバスを見つけ、乗り込みました。

・紅葉はいわかがみ平を下り始めたあたりで見頃となっていました。渋滞の中で、車を降りて紅葉見物している人もいました。紅葉と、抜けるような展望の中をバスは下りて行きました。

・駒の湯十字路でバスを降りて、今晩の宿、「世界谷地温泉」へ。露天風呂からは栗駒山の雄大な姿が望まれました。

・翌朝、目を覚ましてすぐに山の方を見ると、山頂を雲が流れていました。風が強そうです。なんでも、夜、随分と星が綺麗だったそうです。

・朝食をとって、宿の人に世界谷地の駐車場まで送ってもらいました。歩き始めるとすぐに樹林帯が広がります。自然林でした。

・木漏れ日の中をのんびりと歩けば、やがて第一世界谷地。低い木々が紅葉し、草紅葉の原が広がっていました。写真を撮りながら、木道をゆっくりと歩きます。

・湿原の向こうに大地森と栗駒山が望めます。が、栗駒山の山頂を雲を被っていました。風が強そう。前の日に山頂に登ったことは、正解のようです。雲が流れてきて時折陽射しが遮られました。そして、雲間から光が射し込むと、湿原が一斉に輝きました。

・第一世界谷地を一周して樹林帯に入ります。道端にみられたのはセンブリの花。よく見ると、ところどころ、木々にはネームプレートがあります。へぇ〜、コシアブラって見ての通りなんだなぁ、と会話がはずみました。まだ緑多い樹林帯にあって、ヤマウルシやムシカリの紅葉が見事でした。

・今度は第二世界谷地に出ます。こちらの方が広々としていましたが、太陽は雲に隠れる時間が長く、シャッターチャンスがなかなか訪れませんでした。目の前の大地森の姿は、第一世界谷地で見たそれよりも、大きくなってきました。湿原を縁取る林が紅葉していました。

・第二世界谷地を後にして、待望のブナ林に入りました。すぐに鬱蒼とした森になり、太い幹のブナが現われます。形のいい木が現われると「写真タイム」。十分に時間をかけながら、のんびりと歩き続けました。

・突然現われた中年女性3人組は、キノコ取りに来た人たち。なるほど、あちこちにキノコが見られます。素人は手出ししちゃいけない。雰囲気だけを味わいながら歩きます。

・次々に太いブナが現われます。枯れ木にはサルノコシカケ、そしてツルアジサイ。なるほど、アジサイのようなドライフラワーが見られたので、3人で納得しました。

・やがて緩い上り坂を行くようになりました。雲が流れていることは、陽射しの変わりようでわかります。風が強いことは、木々の葉のそよぎでわかりました。清々しさに鼻歌も飛び出してきて、時間をかけてようやく変則十字路まで来ました。

・この先に巨木群があろという。とりあえず行ってみよう、というわけで大地森へ向けて歩き始めました。少し傾斜が増した道を登り続けます。陽射しが戻ってきて、森全体が輝いてきました。ブナの葉は、一部が染まり始めたものの、青々としていました。でも、清々しい雰囲気を満喫できるだけで幸せでした。

・そろそろ、というわけで変則十字路に引き返しました。変則十字路にはベンチがあり、紅茶タイムです。最高のオープンカフェ。BGMは葉のそよぎでした。

・さて、この調子だと、時間がいくらあっても足りない。再びザックを背負って、「しゅっぱーつ!」とハイタッチしたら、歩き始めます。目指すは温湯温泉です。今度は、緩やかな下り坂が続きました。少し行くと、第二世界谷地の縁を歩くため、紅葉した低木が多く見られました。

・やがて下り坂が顕著になってきます。沢の源頭を緩く下ると、一旦植林帯に入ります。再び自然林に出ると、沢へ落ち込む斜面のトラバース。カエデやトチノキが現われてきました。いつしか沢音が大きくなって、林道の終点に着きました。

・ゲートを通過したところで、昼食のために休みます。谷間を風が吹きぬけ、太陽はポカポカと3人に降り注ぎました。山歩きは終ったんだな〜、とちょっぴりセンチな気分も・・・でも、まだまだ楽しい山旅は続きます。

・ここから先は、温湯までの6kmの林道歩きです。ダート道の歩きは、単独だと辛い気分。雰囲気は、奥多摩の日原林道を連想させます。下山のときは本当に辛い。でも、3人で言葉を交わしながらの歩きは、むしろ楽しいほどでした。

・道端に花がさいていれば、何の花だろうと確認しあいました。この時期なのに、思ったよりも花が多いんですね。奥さんのほうが山野草の達人です。次々に見つけるのでした。

・斜面にはブナやミズナラの木が見られます。沢沿いなので、トチノキも増えてきました。まだ青々とした姿です。ふと見ると、ブナとミズナラがくっついた珍しい姿がありました。
「どっちが先に生えてきたのかな?」
ブナが下、ミズナラが上にあって、お互いにもたれかかっているようでした。

・そのうち、話題はカツラの香りとなりました。ベッコウ飴のような香りなんだ、と話していた丁度そのとき、漂ってきました。
「あ!これこれ!この香り」「ホントだ!」
見上げると、丸い葉っぱが陽光を透して輝いていました。

・湯ノ倉温泉入口まで来ました。それまでは静かだったのに、急に車が増えてきました。もう、道の端を歩かないと落ち着きません。さすがに6kmの道のりを歩き続けて足が疲れてきます。
「温泉」、「温泉」、「ビール」、「ビール」
温湯温泉が近づいてくると、最後の力を振りしぼるように、リズムを取るように、掛け声が出てきました。

・深かった谷間が、おだやかな風景に変化してきました。作業小屋のような建物が現われて、生活の匂いが漂ってくると、舗装道路になりました。
「温泉」、「温泉」、「ビール」、「ビール」の掛け声が、
「ビール」、「ビール」、「ビール」、「ビール」に変わったとき、
突然に温湯温泉の佐藤旅館に着きました。

・長く、そして楽しかった山歩きが、終わりを告げました。佐藤旅館のお風呂に入って、疲れを癒しました。満足感がいっぱいでした。

G総括 ・ネットを通じて知り合ったご夫妻との再会、そして楽しい会話を交わしながらのんびりと歩き続けた、大満足のミニオフ山行となりました。

・栗駒山というロケーションも抜群でした。山頂の展望に紅葉の斜面、そして2日目は湿原にブナ林と、この山がもつ多様な魅力を満喫することができました。

・本当に懐が深い山です。またいつか訪れたい山です。今度は湯浜温泉をからめた山歩きをしてみたいです。紅葉の最盛期からは少しずれたので、今度はドンピシャのタイミングで登りたいのですが、上部の紅葉を採るか中腹のブナを採るかで、時期が違ってくるのが悩みです。
って、そんなにすぐには再訪しないでしょうけれど・・・

H気付事項 ・一ノ関からのバスは、人数が多ければ2台出ます。しかし、須川温泉までの道は紅葉見物の車で大渋滞します。自分の乗ったバスは、3時間近くかかりました。計画を立てる際には、このあたりを十分に考慮しなければなりません。(いわかがみ平方面も同様です)

・温湯への交通手段は、この時期はマイカーかタクシーです。タクシー代はいくらだったか・・・確か「くりこま高原」駅まで¥8,000くらいだったと記憶しています。

・第二世界谷地から大地森方面へ登ったところにある「変則十字路」では、指導標で行き先をよく確かめてから歩く必要があります。特に、「温湯温泉」と「湯浜温泉」を混同しないことです。

※印の写真はクリックすると拡大表示されます。(*は同行者撮影)

秋染まる名残ヶ原湿原と栗駒山

焼石連峰を背に登る

栗駒山頂から望む鳥海山

神室連峰と遠く飯豊連峰(栗駒山頂から)

再会を喜び山頂で記念撮影

栗駒山を背に中央コースを下る(*)

撮影中の筆者(世界谷地湿原にて*)

草紅葉の世界谷地湿原(*)

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※大地森を眺めながら湿原を行く

クリックすると拡大表示されます。

※巨木茂る(変則十字路付近)

ブナ林の中を緩く登る(大地森への登路*)

クリックすると拡大表示されます。

※うっすらと色づき始めたブナの森
(大地森への登路)

淡く染まるカツラの木を見上げる
(温湯温泉へ向かう林道で)

林道の道端に咲くコウゾリナ(*)

 

中秋の栗駒山・ブナの森を行く

 


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