薬師岳
「3つの氷河カールを持つ山」の存在を知って以来,いつしか登ることを夢見ていました。立山からの縦走を計画したこともありましたが,別の形で実現することになりました。
@期間 8/17〜18(山中1泊2日)
黒部五郎岳〜雲ノ平の山行を含めると,8/13〜18で山中5泊6日)
A同行者 なし
Bアプローチ 折立から有峰口までバス,有峰口から富山まで電車
Cルート 8/17:太郎兵衛平−薬師平−薬師岳山荘(泊り),薬師岳往復
8/18:薬師岳往復,薬師岳山荘−薬師平−太郎兵衛平−折立
(最高点:薬師岳山頂・標高2926m,難易度:☆☆★★★)
D天候 晴のちときどき曇(8/17,18とも)
E所要時間 8/17:歩行時間約1時間45分,休憩時間約15分,薬師岳往復約2時間(休憩時間含む)
8/18:薬師岳往復約2時間半(休憩時間含む),歩行時間約3時間15分,休憩時間約2時間半)
Fポイント 黒部五郎から雲ノ平,そして薬師沢を経て,太郎兵衛平に戻って来ました。余力があればということで考えていた薬師岳に登ることを決意しました。

・快晴の中,目の前に聳える薬師の巨体に向かって歩き始めました。樹林帯の登りから小沢沿い,雪渓跡のガレ場,そして薬師平へと順調に登っていきます。薬師平からは槍ヶ岳が見えました。

・ここから先は,遮るもののない登り道。山頂に向かって大らかな稜線が延びています。愛知大学の13名の学生が遭難した東南稜がこれまた雄大です。その間を薬師沢右俣がY字状に谷を刻んでいました。ひたすら開放的なコースが続きます。

・薬師岳山荘が現れました。ここでザックを置いてから,山頂に向かいます。グングン高度を上げて,避難小屋跡のニセ薬師を通過し,ついに山頂に着きました。

・心地よい風に吹かれて,のんびり過ごしました。快晴だった空に雲がもくもくと湧き上がってきます。目の前を黒部の流れが深い谷を刻み,その谷を挟んで赤牛岳がスッキリとした形で聳えていました。後立山連峰も初めて目にしました。北アルプスの奥深さに酔いしれていました。

・時々ガスが上がってきて視界が閉ざされます。いかにも夏山といった雰囲気です。居眠りできそうですが,天候の急変がちょっと恐い。かなり厚い雲に覆われてしまい,肌寒くなってきました。山頂を後にして,薬師岳山荘まで下りて,宿泊の手続きをしました。

・再び雲が切れてきました。晴れたり曇ったりの繰り返しです。晴れたら外に出て,曇れば寒いので小屋に引っ込む。これの繰り返しで,案外退屈してました。高山植物も少ない山です。でも,翌日には折立に下山するので,名残惜しい時間帯でした。

・薬師岳山荘の夕食はこじんまりとした雰囲気の中。食べ終わって外に出れば,日が傾きオレンジの夕陽が雲海に沈んで行きました。辺りが暗くなると,富山の夜景が見られました。

・暗いうちに起きました。外に出れば気温は8℃。富山の街は眠りに包まれています。見上げた空には17日の月と満天の星。

・ヘッドランプを灯して岩屑の斜面を登り始めます。慎重に踏み跡を探しながら。見上げる斜面にも点々と明かりが登っていました。やがて東の空が薄明るくなってきました。前の日と同じ道,ニセ薬師の避難小屋跡を過ぎれば,空はほんのり赤みを帯びてきました。

・山頂につきます。それほど強くない風が吹く中,三脚にカメラをセットしました。シルエットの山なみが神々しさを醸し出し,黒部の谷は深い闇の中に包まれていました。

・烏帽子岳から北(左)続く稜線の向こうは雲海でした。やがてその一角が紅みを帯びてきました。そして太陽が昇ってきました。山頂に集う人々もいつしか喋るのを止めて,ご来光に見入っています。「ここまで来てよかった」素直に思いました。「山登りをやってて,本当によかった」手を合わせながら,その思いを噛み締めていました。

・真紅の光に包まれ,それに呼応して山々が染まります。何よりも,隣の北薬師との間にある金作谷カールが燃えるようでした。

・遠く槍・穂高連峰の岩稜も,光を浴びていました。手前の雲ノ平には光りは届いていません。しばらく経って,ようやく雲ノ平も光り始めました。その頃には,陽射しは強くなって,その放射熱が身体を温めるようになっていました。

・1時間半ほどいた山頂をようやく後にして,小屋まで下りて行きました。視線の先には黒部五郎岳,笠ヶ岳,乗鞍岳,木曽御岳が並んで見えていました。また,遠く加賀の白山が雲海の上に広がっていました。

・小屋で食事をとってから,ゆっくりと下り始めました。薬師平で13人の御霊に手を合わせ,太郎兵衛平で長い休憩を取って歩いてきた黒部源流の山々の見納めをしました。

・空にはいつの間にか秋の雲が高く広がっています。太郎兵衛平に心の中でさよならを言って,6日前に登って来た道を折立に向かって下山を始めました。夢のような6日間が終わろうとしていました。

G総括 ・以前,立山からの縦走を計画したこともある薬師岳に,ようやく登ることができました。その乾いた感じ,山頂からの存分の展望は,黒部源流エリアとは明確に異なるエリアの山でした。今度来るときは,立山と合わせた縦走にしてみようと思います。

・ご来光を見るべきかどうかで迷っていました。後悔すると思って見に行きましたが,見てよかったと思いました。後立山連峰も,剱に立山も,そして槍・穂高連峰も勿論よかったのですが,金作谷カールが染まる様子がとても印象的でした。

・これまで歩いた距離を,黒部五郎岳〜雲ノ平の山行も含めてまとめてみました。太郎兵衛平にある距離表示と,登山地図から計算しました。
8/13:8km(折立−太郎兵衛平)
8/14:12.5km(太郎兵衛平−五郎平)
8/15:13.5km(五郎平−雲ノ平)+1.5km(雲ノ平散策)
8/16:4km(雲ノ平散策)+3km(雲ノ平〜薬師沢小屋)
8/17:10km(薬師沢小屋−太郎兵衛平−薬師岳−薬師岳山荘)
8/18:14km(薬師岳山荘−薬師岳−太郎兵衛平−折立)
→合計66.5kmを歩いたことに。自分をほめてあげたい。(^^;

H気付事項 ・薬師岳山荘は天水の小屋。太郎平小屋か,途中の沢で水を汲んでおきましょう。小屋ではミネラルウォーターを販売していますけど。

・ニセ薬師からの下り坂は,尾根が広いので霧のときには確かに注意する必要があるかもしれません。

・折立のバスは,8/16までは本数が多いのですが,8/17からは1日2本です。H12年度は9:10,15:20発の2本でした。タクシーを呼ぶなら太郎平小屋で予約するしかありません。折立には電話もないのです。

 

雄大な稜線と薬師沢右俣

薬師岳の山頂に立つ

後立山連峰の黎明
(左から唐松,五竜,鹿島槍)

薬師岳山頂からのご来光
(稜線は不動岳,北葛岳付近)

燃える金作谷カール(右後方は剱,立山)

槍・穂高連峰と朝日差込む雲ノ平

 


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