山伏〜八紘嶺

安倍奥の雄峰といえば、2000mを抜く山伏。残雪の南アルプス南部の展望や、秘境の深南部の姿を焼き付けたいと思っていました。
夕刻、雲海に浮かぶ大無間山に見とれていました。よく見ると左肩を滝雲が流れていました。神秘的な光景は、やがて目の前に湧き上がった雲に隠されました。

山伏小屋付近より雲海に浮かぶ大無間山を眺める

@期間 2003/5/2〜3(1泊2日)
A同行者 O君
Bアプローチ 行き:JR東海道新幹線・新富士駅より、大谷崩直下の駐車場まで車

帰り:駐車場より、コンヤ温泉に立ち寄ってから、JR静岡駅へ

Cルート 第1日:大谷崩直下の駐車場[1220m]−新窪乗越[1850m]−ヨモギ沢の頭[1910m]−山伏山頂[2014m]−山伏小屋[1850m](泊)

第2日:山伏小屋−山伏山頂−ヨモギ沢の頭−新窪乗越−大谷嶺[2000m]−五色ノ頭[1859m]−八紘嶺[1918m]−五色ノ頭−大谷嶺−新窪乗越−駐車場
(地図記載以外の標高は、等高線より読み取っているため、不正確です)

最高点:山伏山頂・標高2014m,難易度:☆☆☆☆★

D天候 第1日:晴のち一時曇

第2日:晴

E所要時間 第1日:約5時間(歩行+休憩時間)

第2日:約9時間半(歩行+休憩時間)

Fポイント
(第1日)
・安倍川に沿って上流へと車を走らせます。目に鮮やかな新緑が続いていました。新田で登山口へと向かいます。車の回収を考えて、大谷崩直下の駐車場を目指します。このあたりは芽吹きが浅く、淡い黄緑色の世界でした。

・駐車場に車を止めて、出発。青空の下、大谷崩は迫力満点に聳えています。無人小屋に泊まるための70Lのザックが、全身に重石となってきます。扇の要、堰堤、水場と斜度が緩い中を歩けば、淡い新緑と春の陽射しに包まれています。やがて、樹林帯を抜ければ、急登が続きます。

・カール状をした大谷崩の脇を登ります。ものすごい急登が続き、何度を足を止めます。みるみる高度を上げて、眼下の駐車場はすり鉢の底にあるようでした。足元は崩れやすい岩屑でした。

・ようやくのことで、新窪乗越に登りつきました。高度感満点の大谷崩を見下ろしていると、雲が流れてきて、視界が遮られるようになりました。吹き上げてくる風、そして大気は確実に夏に向かっていることがわかりました。

・ここから先は稜線の縦走です。南アルプスの展望が続くのかと思いきや、樹林帯を行きます。林床には花芽が出始めたイワカガミがあちこちに見られました。少し行ったところのピークはヨモギ沢の頭。このあたりは、一面の笹が倒伏した姿を見せていました。不思議に思ったのですが、答えはあとでわかることに・・・

・緩いアップダウンが続き、霧の中から山伏がこんもりと盛り上がった姿を現します。やがて北斜面に差し掛かったら、残雪が急に増えてきて、雪の上を歩くようになりました。これが厄介で、腐れ雪にズボズボと足を取られて思うように進まなくなってきます。油断するとルートも間違えてしまいます。そうか、笹の倒伏は雪解け直後を意味していたのか・・・

・なんとか雪の多い北斜面を通り抜ければ、平坦で広い山伏の山頂に着きました。何事もなかったような清々しい山頂が広がっていました。しばらく、ボーッと休んでいました。

・山頂から南に15分ほど下ったところに山伏小屋がありました。近くの水場は、沢水で水量が豊富です。たった15分しか下っていないのに、これだけの水量が得られるのが不思議な感じです。山小屋は無人ですが、20人くらい泊まれる立派なものでした。この日は、2人組がもう一組いただけの、4人でした。

・食事を摂ったら、日没が近くなってきました。小屋近くの展望地に立つと、南西の方角に南アルプス深南部の雄・大無間山が堂々とした姿で聳えています。眼下は雲海、そしてよく見ると、大無間山の左肩には滝雲が流れていました。それはそれは不思議な光景でした。

・西には、上河内岳から光岳にかけての稜線が、長々とシルエットで横たわっていました。光岳に向けて日が沈んで行こうとしていたそのとき、雲が湧き上がってきて、視界は閉ざされてしまいました。

・小屋に戻ってシュラフを敷いて就寝。真夜中、目を覚まして外に出ると、山深く、濃密な雰囲気が漂っていました。そして、見上げた空に驚きました。凄みを感じさせる星空が広がっていて、星明かりが降り注いでいるようでした。しばらく見ていたかったのですが、何かが出そうな気がしてすぐに小屋に入ってしまいました。(^^;;;

※印はクリックすれば拡大表示されます。

青空に向かって突き上げるような急登です。

大谷崩の下部より見上げる
(鞍部が新窪乗越)

覆いかぶさるような急登。忍の一字で登ります。

大谷崩の急登をひたすら登る

よくもまあ、こんなところを・・・

登ってきた急登を見下ろす

残雪が現われて、ズボズボとはまります。侮り難し〜(笑)

残雪を踏みながら山伏北面を登る

笹に針葉樹が程よく配置された山頂です。

※爽やかな山伏山頂

南アルプス南部の稜線がシルエットで続いていました。

光岳への日没(山伏小屋付近より)

Fポイント
(第2日)
・翌朝、アラームが鳴っています。O君がセットしたアラームが無人小屋に響いていました。といっても、同宿の2人パーティーは既に起きています。あれれ、5時なの?4時に起きてご来光を拝む目論見は外れ〜。今思えば、位置関係からダイヤモンド富士だったかも、と残念、残念。

・食事を済ませて展望地に出ると、快晴の中に南アルプス深南部の山々が見えています。重畳たる山なみが続いて、ひたすら山深いことを実感しました。

・山伏の山頂に登り返せば、東の方角には富士山が雄大な姿を見せていました。北西に目を転ずれば、荒川、赤石、聖、上河内が残雪の峰を輝かせています。清々しいことこの上なく、去り難い気分でした。中年3人組が登ってきて、これから青薙山へ道なき道を行ってから、畑薙湖に下山するとのこと。健闘を誓い合って(大袈裟?)、山頂を後にしました。

・雪の北斜面を一気に抜ければ、新窪乗越までは起伏の少ない尾根道が続きます。十枚山を目立たせた安倍奥東山稜もまた見事な景観を作っていました。樹間から七面山と、奥に北岳方面が見えると、新窪乗越。ここからは八紘嶺までの往復ということで、荷物の大半を置いて行く事にしました。

・大谷崩の縁を急登が続き、吹き上げる風を受けて、大谷嶺に登りつきます。ここから見る南アルプス南部の山々は、格別でした。

・ゆっくりしてられないので、先を急ぎます。所々に現われる残雪を踏みながらの稜線歩きが続きます。このあたりは林床にバイカオウレンが至る所に咲いていました。

・小刻みなアップダウンが続きました。荷物の大半を置いて身軽なはずなのに、疲れが蓄積していることが判ります。八紘嶺が近づくにつれて、アップダウンがきつくなってきました。気温も上昇しているようです。最後の八紘嶺へ向けての急登は、相当に応えました。O君の姿がどんどん小さくなって行きました。

・正午前にようやく登りついた八紘嶺は、1年前に登ったときと同じ風景のはずなのに、全く違う山に来たような気分でした。

・食事を摂って、すぐに引き返します。疲れが更に蓄積して、身体が重く、同行のO君のペースに合わせることができません。律儀に尾根通しを進むコースをうらんだものでした。ついに水がなくなってしまいました。仕方ないので、残雪の表面を手で掻いて、白い雪をすくって口にしました。

・なんとか新窪乗越まで戻って、少し休んで15時過ぎ、再び70Lのザックを背負って大谷崩を下り始めます。風が涼しくなってきました。もうすぐ終わるという気持ちが、気力を与えてくれているようです。が、踏ん張りはあまり効かず、ときどき小石を落としながら、ひたすら下って行きました。O君の姿はみるみる小さくなっていきました。

・ザレ場を過ぎて水場まで下りてくると、O君が待っていました。冷たい水を口に含んだとき、心の底からホッとした気分になりました。あとはのんびりと歩いて、駐車場に戻ってきました。

G総括 ・山深い安倍奥を全身で感じた山行となりました。特に、山伏の雰囲気が素晴らしく、再訪したい気持ちが強く残りました。

・また、南アルプス深南部の山々もこの目で初めて見ることができました。大無間山の姿は、立派の一言に尽きます。太古の姿を残しているあの山を、踏むことができればいいな、と思わずにはいられませんでした。実現する日は果たして来るのでしょうか?

・今回は車の回収を考えて、大谷崩を発着点としました。T字のピストンとなりましたが、思ったよりもタフなコースでした。

H気付事項 ・山伏から八紘嶺に向けて歩く場合には、山伏小屋から先の稜線に水場がありません。気温が上がった中で、水の消費量も予想以上でした。このあたりを念頭に置いて行動することが必要です。

・新窪乗越から大谷嶺にかけては、慎重に歩けば問題ありませんが、バランスを崩して転落する危険性があります。また、すり鉢状の大谷崩を吹き上げる風にも注意して下さい。

・大谷崩のザレた斜面は、所々に落石を起こしやすい不安定な場所があります。そのあたりを心得て行動して下さい。急登で休む場合でも、落石の通り道を避けた場所で休むことです。

※印はクリックすれば拡大表示されます。

左右に優美な裾野を引く富士山を見ることができました(^o^)

山伏山頂からの富士山

南方に目をやると風格のある山がありましたが、同定できず。

山伏小屋付近の展望地から南を見る

写真で見るよりも素晴らしい白銀の峰々でした。

※山伏山頂から荒川、赤石、聖

なかなか風格のある山なみが続いていました。

十枚山を目立たせた安倍奥東稜

ここからの眺めも見事です。深い谷を隔てた白峰南嶺も印象的でした。

※大谷嶺からの展望

見下ろす斜面は迫力満点。風が吹き上がって緊張させられました。

大谷嶺へ登りより大谷崩の斜面

純白の花びらが目に鮮やかでした。これだけ沢山の群落に驚かされました。

林床に群れ咲くバイカオウレン

 


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