唐松岳〜五竜岳

後立山連峰は長らく遠い存在でした。未知のエリアに期待が高まります。

八方尾根を登っていると、ガスが切れて、五竜岳の雄姿が見えました。

翌朝、あの頂に立つ(八方尾根にて)

@期間 2003/9/14〜15(山中1泊2日)
A同行者 Kt君
Bアプローチ 行き:JR大糸線・白馬駅よりバスにて八方BTへ、ゴンドラ、リフトを乗り継いで第1ケルンへ

帰り:アルプス平より、テレキャビンで遠見へ、JR大糸線・神城駅までタクシー

Cルート 第1日:第1ケルン[1840m]−八方池[2090m]−扇雪渓[2361m]−唐松岳頂上山荘[2620m]−唐松岳[2696m]−唐松岳頂上山荘−牛首−(最低鞍部)[2320m]−五竜山荘[2490m](泊)

第2日:五竜山荘−五竜岳[2814m]−五竜山荘−白岳[2541m]−西遠見山[2268m]−中遠見山[2037m]−小遠見山[2007m]−アルプス平[1515m]
(※地図記載以外の標高は、等高線より読み取っているため、不正確です)

最高点:五竜岳山頂・標高2814m,難易度:☆☆☆★★

D天候 第1日:晴のち曇

第2日:曇ときどき晴

E所要時間 第1日:約7時間半(歩行+休憩時間)

第2日:約6時間半(歩行+休憩時間)

Fポイント ・友人の誘いにより、初めての後立山連峰への山行が実現しました。まだ山を始める前に八方尾根スキー場に行ったことがあり、白銀の峰々に感動を覚えたことがよみがえってきました。

・前の日に通過した台風の吹き返しが気になっていましたが、まずまずの天候です。前泊した大町から大糸線に乗って、白馬駅に下り立ちました。長野五輪に燃えた5年前の喧騒が懐かしいです。

・ゴンドラアダムに乗って高度を上げて行きます。背後に戸隠連峰や妙高山が顔を出します。
「お前は山屋だなぁ」
と同行者に言われます。聞かれもしないのに、あちこち指差して説明するからだってさ。じゃ、あんたは何屋?と聞き返したかったけど、今やすっかり山屋となってしまったことは否定できませんでした。それどころか、幸福感すら持っていました。

・五輪のダウンヒルコースのスタート地点に来ました。吸い込まれそうな程に、ものすごい急傾斜です。観光客も記念写真を撮っていました。こんなのもありかな。一般人が山に近づくことができるのはいいことだと、自然に思えたのです。

・八方池の近くまで来たとき、ハッと息を呑む光景が目に入ります。これぞ有名な不帰ノ瞼。自然の造形美が連なっていました。解放感の中でひと休み。白馬連峰は雲の中で、山襞が時折姿を見せる程度でした。

・広い尾根を登っていくと、やがて南側をトラバース気味に進みます。そのとき、雲が切れて五竜岳の雄姿が目に飛び込んできました。深田久弥が絶賛した、堂々たる姿でした。更にほんの一瞬だけ、五竜岳の奥に鹿島槍の双耳峰が姿を現しました。やはり迫ってくるものを感じました。

・扇雪渓を抜けて再び尾根筋へ出ると、緩いながらも着実に高度を上げて行きます。空は徐々に雲に覆われてきました。やがて、唐松岳頂上山荘に着いて、外のベンチで小屋のラーメンを食べました。強めの西風が吹いていましたが、台風の吹き返しのようです。

・黒部峡谷をはさんだ向かい側の剱岳は、雲を被っていました。五竜岳も徐々に雲を被りはじめて、雲の底が低くなってきた様子です。陽射しは完全に遮られて、寒くなってきました。

・目と鼻の先にある唐松岳に登ります。北側に連なる不帰ノ瞼は、信州側からガスが湧き上がっています。湧き上がったガスと吹き返しの西風が稜線でぶつかって、そこでガスは消えていました。

・唐松岳頂上山荘を出発し、大黒岳に差し掛かったところで、2羽の雷鳥に遭遇。小さな声で「ビャビャビャ」と啼いていました。(まだ子供だったのかなー?)

・大黒岳のピークを巻くと、これから行く稜線が雲を被った五竜岳に続いています。そして、核心部の鎖場が始まりました。久々の悪場通過で、身体が硬直気味(^^;;両手をフリーにして3点支持により慎重に通過しました。

・高度を下げて潅木帯を行きます。黒部側の斜面と信州側の断崖、風雪が作り上げた非対称山稜となった稜線を行きました。やがて再び高度を上げて、白岳へ向けての登りが続きます。一歩一歩足を運べば遠見尾根分岐を過ぎて、突然眼下の鞍部に五竜山荘が現われました。

・五竜山荘は大混雑。冷夏でストレスがたまっていた山屋がどっと繰り出したためでしょうか?小屋のスタッフに指示された場所に行くと、先に来ていた連中が厳しい視線を向けてくるのです。ま、2年前の涸沢で体験した混雑に比べれば大したことない。とにかくスペースを確保しました。

・外は西風が吹きつけて、稜線で雲が湧き上がっていました。信州側を見渡せば、目の前に長大な遠見尾根が続いていました。明日、ここを下るんだな・・・一方、南東方向を見れば遠く松本盆地が広がっていて、太陽に照らされて残暑に包まれているようです。それに引き換え、小屋の玄関の温度計は11℃。風も加わって、外に長くいることはできませんでした。

・食事を取って床に就きました。仰向けに寝ることが出来たし、寝返りも打てたので、まずまずの寝心地でしたよ(笑)

・翌朝、眼が醒めてボーッとしてたら、急に動きが慌ただしくなったので何事かと問うたらご来光とのこと、半分寝ぼけた状態で外に飛び出し、ご来光を拝みます。松本盆地の奥に、遠く八ヶ岳のシルエットが浮かんでいました。

・食事を摂ってからも二人とも動きが鈍く、なんとなくマッタリとしてたら、宿泊者の大半が出てしまったので、仕方なく動き始めます。(元々朝は極度に弱く、中途半端な調子のまま歩き出すと、途中で体調が悪化することがあるので、ギリギリまで待って出発するのです)

・相変わらず西風が吹きつけて、雲を湧き上がらせています。なんとなく気が乗らない中を五竜岳へ向けて登っていると、既に登頂を果たした宿泊者が立て続けに下りてきました。

・五竜岳山頂に立ちます。浮揚感を全身に感じますが、乳白色のガスに包まれた世界です。時折明るくなって一瞬だけ雲が切れますが、遠望はかなわず、剱岳の姿はおろか、隣の鹿島槍も心の眼で見るだけでした。五竜山荘に戻る頃、ようやく雲が切れてきて、斜光線が差し込んできました。斜度の緩い西斜面に光が当たって輝きました。

・五竜山荘で身支度を整えて出発。白岳へ登り返してから、遠見尾根の下りに差し掛かります。西遠見山の下りはお花畑が広がっていました。そこからの大遠見山への登り返しが思いの外きつくて、時折休みをとりながら歩きました。やがて池塘を過ぎると、潅木に覆われた稜線を行くようになります。遠見尾根といいながら、遠望は利きません。

・それでも、所々に展望地が現われます。見ると、それまで雲に覆われていた鹿島槍ヶ岳が徐々に姿を現しました。ここからの姿は、おなじみの双耳峰ではなく、北峰のみが文字通り聳え立っていました。縦に深く刻まれた雪渓が輝いていました。

・足元には、オヤマリンドウが今を盛りと咲き誇っています。アキノキリンソウも至る所で咲いていました。アカモノやゴゼンタチバナが真っ赤な実をつけていました。それにしても、ぬかるみの多い尾根道です。

・中遠見山を経て小遠見山まで来ました。ガスに包まれたりして遠望は利きません。アルプス平へ向けての最後のステージ。スタートした直後、ガスが切れて、これまで通ってきた長大な遠見尾根の向こうに五竜岳を見ることができました。あの頂から歩いてきたのか・・・感慨深いものを感じました。堂々たるその姿はすぐにガスに包まれましたが、一瞬でも見ることができたので、満足でした。

・やがて樹林帯に入って、少し行けばアルプス平の上部に広がるお花畑に出ました。アザミに似た秋の草、タムラソウが咲き乱れていました。あとは疲れ切った足をゆっくりと運んで、テレキャビンの乗り場に辿りつくだけでした。

・テレキャビンで下ったところにあるエスカルプラザでゆっくりとお湯に浸かり、タクシーで神城駅へ。そこは残暑の中にありましたが、秋の気配が色濃く漂っていました。列車が来るまでの45分ほどの間、歩いてきたルートを反芻しながら、のんびりと過ごしました。

G総括 ・初めての後立山連峰は天候が今ひとつで、当てにしていた剱岳を見ることができませんでしたが、北アルプスの雄大さに久々に接することができました。コースも手頃で、満足の山行となりました。

・やっぱり北アルプスはいいですね〜。最近は素朴な東北や、山深い南アルプスに目が行っていましたが、雪が豊富で秀麗な北アルプスを見るとこれも捨て難いと思いました。あ〜身体が一つでは足りません(笑)

・紅葉にはまだ時期的に早かったですが、稜線ではウラシマツツジの紅葉が見られました。残暑厳しい下界でしたが、着実に秋が来ていることを実感しました。

H気付事項 ・牛首の鎖場は、最近滑落事故があったようで、唐松頂上山荘に注意を喚起する表示がありました。慣れている人には問題ないかもしれませんが、高度感もあって緊張させられました。ストックは仕舞って両手をフリーにすること、岩にひっつき過ぎないことが大切です。

・2003.8〜2004.7の期間限定ですが、鹿島槍ヶ岳の南にある冷池山荘は建て替え工事中です。素泊まりもできません。営業に関する問い合わせはTEL.0261-22-1263まで。

・神城駅には特急あずさが一部停車します。とおみに下りて、多くの人が白馬駅に向かうようですが、予め調べておくと便利です。空席率が気になるところですが、今回は十分に余裕がありました。夏休みだとそうはいかないかもしれませんね。

※印はクリックすると拡大表示されます。(*)印は同行者撮影です。

長野五輪の喧騒の名残をわずかにとどめていました。

八方尾根のダウンヒルコースを見下ろす

突然姿を見せた鋭峰群。感動的でした。

八方池付近より不帰ノ瞼

まだまだ余裕?観光客も多いです。ケルン群は八方尾根の象徴ですね。

第3ケルン(*)

扇雪渓の手前に沢山咲いていました。

トリカブト

剱岳はいずこ?

唐松岳山頂(*)

 

信州側はガス湧く不帰ノ瞼(唐松岳山頂にて)

ツガイのようで、小さな声で呼び合っていました。※クリックすると拡大表示されます。

※大黒岳で見掛けた雷鳥

核心部の鎖場にかかります。五竜岳は雲の中。

牛首の鎖場の向こうに続く稜線

このあたりでガスが切れて谷間の村を望むことができました。

信州側を俯瞰

信州側からは再びガスが湧きあがってきました。

再び信州側よりガスが湧く(*)

眼下を長大な尾根が続いていました。※クリックすると拡大表示されます。

※翌日下る遠見尾根(五竜山荘前より)

西風吹きすさぶ中、すぐ上空を雲が流れていました。※クリックすると拡大表示されます。

※ご来光(五竜山荘前より)

雲の切れ間から差し込む朝日に、西斜面が輝きました。※クリックすると拡大表示されます。

※斜光線

五竜山荘前に見事な群落を作っていました。

五竜山荘前のタテヤマアザミ

少し過ぎ加減でしたが、この山行中で印象的な花でした。

カライトソウ(遠見尾根)

雪渓が印象的でした。※クリックすると拡大表示されます。

※鹿島槍北峰(中遠見山にて)

あそこから下ってきた・・・遠見尾根の長大さを実感!

ガスの切れ間に姿を見せた五竜岳

秋の山野草としてはポピュラーな花です。

タムラソウ(アルプス平上部)

 

秋の気配漂う神城駅にて

 


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