甲斐駒ヶ岳

ピラミダルな雄峰・甲斐駒ヶ岳。釜無川から一気に突き上げる急登の尾根をいざ踏まん。憧れはいつしか強い欲求へと進化し、ついに実現する日が来ました。

七丈小屋で迎えた朝、清々しい空気の中、オベリスクを目立たせた鳳凰三山と富士山のシルエットが目に鮮やかで、長大な尾根の登頂を約束してくれるようでした。

七丈小屋の朝

@期間 2002/8/15〜16(1泊2日)
A同行者 なし
Bアプローチ 行き:JR韮崎駅より横手駒ヶ岳神社までタクシー

帰り:北沢峠より広河原経由でJR甲府駅までバス(芦安村役場バス停で途中下車)

Cルート 第1日:横手駒ヶ岳神社−笹ノ平−刃渡り−刀利天狗−五合目小屋−七丈小屋(泊)

第2日:七丈小屋−八合目御来迎場−甲斐駒ヶ岳山頂−駒津峰−双児山−北沢峠

(最高点:甲斐駒ヶ岳山頂・標高2967m,難易度:☆☆☆☆★)

D天候 第1日:晴のち雨

第2日:晴のち曇

E所要時間 第1日:約7時間(歩行+休憩時間)

第2日:約6時間15分(歩行+休憩時間)

Fポイント ・甲府で迎えた朝、早くも猛暑の雰囲気が漂っていました。JRで韮崎駅へと移動し、タクシーで横手駒ヶ岳神社へ。往時の甲斐駒メインルートの面影はまったくありません。空を見上げれば、雲は多め。登山の無事を祈って出発しました。

・自然林の中を登って行きます。最初からかなりの登りです。しかし、直射日光は遮られています。所々に開ける展望から、高度が上がっていることがわかります。谷間からは発砲音のようなものが響いてきました。

・鬱蒼とした樹林帯の道が続きます。急登から解放されると、しばらくは平坦な道。道端にレンゲショウマを見つけました。可愛い花です。初めてこの目で見ました。やがて下りに差し掛かり水場に出ます。花崗岩の間より湧き出る水・・・まさに「南アルプス天然水」です(^^)

・ここから笹ノ平までが尾根に取り付く九十九折の急登でした。そろそろと期待しても必ず裏切られて登りが続きます。やがて斜面が笹で覆われてきました。ようやく白須口との分岐点・笹ノ平です。ものすごい汗、心臓の鼓動が頭蓋骨を通して聞こえてくるようです。一休み。

・歩き出してしばらくは緩やかな登りが続きましたが、八丁坂に差し掛かり再び急登に次ぐ急登です。木の根をつかんでよじ登ります。滝の汗が流れます。林相が針葉樹に変わってくる頃、尾根がやせてきて、ついに「刃渡り」のたもとに着きました。ストックをしまって、一休みします。既にガスに包まれて、小雨が降ってきました。

・刃渡りの鎖場は、天空の回廊といった雰囲気。両側は視界が利くはず・・・なのですがガスの中でした。そこから先もやせ尾根が続きますが、登路は安全なところを通っています。

・鬱蒼とした針葉樹林帯の中、刀利天狗(標高2049m)に達すると、そこには剣や石碑が沢山ありました。そこから黒戸山を巻く比較的平坦な道が続きました。やがて下りとなって、五合目小屋に辿りつきました。眼前に聳える屏風岩が圧倒的でした。再び雨が降ってきて本降りになったので、しばらく雨宿りしました。

・雨が止んで出発。ここからは屏風岩を回り込むようにして、ものすごい急登が続きます。垂直な梯子を幾つも登って行きます。木の間越しに見える景色から、ぐんぐんと標高が上がって行くのを実感します。突然、視界が開けて七丈小屋(標高2360m)に着きました。息を整えてから小屋に入りました。ビールが美味かった〜!

・雲は低く垂れ込めて再び雨が降ってきました。小屋番のおじさんとしばし談笑。週2回下界に買い出しに行っているとか。しかも黒戸尾根を往復しているなんて驚きです。雨が止むと、小屋の正面に鳳凰三山が顔を出し、その奥に富士山も時折姿を見せました。

・やがて夕食。「山小屋は趣味でやっている。採算は考えていない」とのこと。個人経営の山小屋でこれほどの豪華な夕食にびっくりです。食事が終わると、疲れもあってすぐに寝入ってしまいました。

・翌朝、4時半に目が覚めました。外へ出ると、静寂が包んでいました。雲海の上にオベリスクを目立たせた鳳凰三山と富士山のシルエットが神々しいほどでした。朝食をとって準備を整える頃、辺りは朝日に包まれます。早くも雲海が盛り上がり始めます。

・寝起きが悪いので、焦らずに体調が万全になるのを待って出発しました。再び急登が続きます。樹木の背丈が低くなって背後に八ヶ岳も望まれます。やがて森林限界。視界は一気に開けました。釜無川を隔てて八ヶ岳が颯爽とした姿です。遠くかすかに、槍穂高連峰も認識できました。

・八合目の御来迎場で一休み。学生っぽい5人組と言葉を交わし、写真を撮ってもらいました。行く手に白い岩峰が覆いかぶさるように圧倒的な姿で聳えていました。どこを辿れば登りつくのだろう・・・そう思わずにいられないほどでした。

・八合目を出発すると黒戸尾根の登りはクライマックスを迎えます。梯子と鎖が連続する中、グイグイと高度を上げて行きます。左側はスパッと切れ落ちた懸崖です。オベリスクはいつの間にか目線より低くなっています。疲れて5人組と一緒に一休みしていると、ガスが上がってきて視界は閉ざされました。

・再び立ち上がりガスの中、登り始めます。振り返ればガスの中、剣を2本立てた大岩が浮かび上がっていました。

・ガスが切れて山頂が姿を見せます。急登は過ぎ去って、あとはひたすら山頂へと「天空の回廊」を登って行くだけでした。そして、ついに標高2967mの甲斐駒ヶ岳山頂に着きました。
「ヨッシャ!」
心の底から出た言葉は、しかし周りの人たちを気にして、控えめに発せられました。(黒戸尾根コースは最後、北沢峠からの道を合わせます。そうでなければ、もっと全身で喜びを表したかもしれません)

・ガスが湧き上がってきて、視界はすぐに閉ざされます。北岳は一瞬だけ姿を見せてくれました。富士山はおろか鳳凰三山も見えませんでした。仙丈ヶ岳もダメです。鋸岳と中央アルプス方面がなんとか望めましたが、その中央アルプスも上部は雲を被っていました。

・1時間ばかり、登頂の満足感に浸っていました。北沢峠から次々と登山者が登ってきます。そろそろいいかな、と腰を上げて北沢峠を目指して下り始めました。

・花崗岩の白い道を下って行きます。六方石で振り返ると、甲斐駒の山頂はここからも圧倒的な姿で聳えていました。駒津峰に登り返すと、既にその姿はガスの中でした。そこから北沢峠までは、黒戸尾根の急登を登り詰めてきたことを忘れさせるような、優しい道でした。

G総括 ・念願叶っての登頂でした。「甲斐駒を登るなら黒戸尾根から」拘りを持っていました。だから、機会を待ち続けていました。果たしてこの長大な尾根を登ることができるのだろうか?そう思っていたときに悠歩さんのHPの登頂記録が目に止まり、いつしか自分もと思い続けていたのです。

・笹ノ平までの登りと、八丁坂の急登が応えました。ここまで汗をかいたことが果たしてあったか、というほどでした。ひたすら無心で登り続けました。しかし、下山してから不思議とダメージはそれほどありませんでした。コース自体は歩きやすかったことも原因でしょうか。

・登頂を果たした直後は、黒戸尾根はもうこれでいいや、と思っていました。しかし、また登ってもいいかな、という気分になっています。信仰登山を色濃く残している、その雰囲気も気に入りました。今度登るとしたら、もう少し余裕をもって、石碑や剣を眺めながら歩いてみたいです。

H気付事項 ・入山を横手駒ヶ岳神社にしたのは単にタクシー代を節約するためです。韮崎駅から\5,500程度です。また、韮崎駅から横手へのバスは本数が少なく、神社まで行ってくれないのが難点です。

・五合目小屋は無人の避難小屋です。七丈小屋で夕食つきを頼む場合には16時までに到着しなければなりません。ただし、カップ麺などは販売しています。

・梯子は多くが架け替えられたばかりで安心して登れます。しかし、一部に古い梯子も残っているため、通過の際には要注意です。

・七丈小屋の小屋番さんが言うには、渇水時には小屋の水が涸れることもあるそうです。そうなると食事は出せなくなるそうです。「七丈小屋に水があると知って、500mlのペットボトル1本しか持ってこない勘違いした人がいる」と言っていましたが、あてにしすぎないことです。

・八合目から九合目までの鎖場の中で一ヶ所、高さ3mほどのオーバーハングになっているところがあります。体勢的にザックが引っ掛りやすく、背が低い人には難所です。また、下りにとる場合は要注意だと思います。

I余談 ・甲府へ戻る途中で、芦安温泉に寄りました。御勅使川が刻む谷間の温泉です。風呂から上がり、南アルプス街道に出てバスを待っていたら、爽やかな風が吹いてきました。既に晩夏の雰囲気でした。

※印の写真はクリックすると拡大表示されます。

樹林帯の道を行く

レンゲショウマ

木の間越しに下界を望む

刃渡りの鎖場はガスに包まれて

橋を渡り七丈小屋へ登る

クリックすると拡大表示されます。

※背後に八ヶ岳連峰が顔を出す

八合目御来迎場にて(背景は山頂)

九合目の大岩に立つ2本の剣

一瞬、雲が切れて北岳が姿を見せた

山頂に咲いていたトウヤクリンドウ

山頂よりこれから下る駒津峰を見下ろす

クリックすると拡大表示されます。

※六方石より甲斐駒山頂を仰ぐ

 


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