大菩薩嶺(3回目)
大菩薩連嶺から真東に伸びる平らかな尾根。名付けて「牛ノ寝通り」。この気になる稜線を,落ち葉を踏んで歩く計画を暖めていました。
@期間 11/18,19(山中1泊2日)
A同行者 なし
Bアプローチ 行き:JR塩山駅から大菩薩峠登山口までバス

帰り:小菅(池ノ尻)バス停からJR奥多摩駅までバス

Cルート 第1日:大菩薩峠登山口バス停(裂石)−上日川峠−唐松尾根−雷岩−大菩薩峠(介山荘泊り)

第2日:大菩薩峠−石丸峠−榧ノ尾山−牛ノ寝−大ダワ−小菅

(最高点:雷岩・標高約2030m,難易度:☆☆☆★★)

D天候 第1日:快晴

第2日:快晴

E所要時間 第1日:歩行時間約3時間半,休憩時間約1時間

第2日:歩行時間約3時間45分,休憩時間約45分

Fポイント ・前日,南岸を進んだ低気圧が東京に冷たい雨をもたらしました。この日は快晴です。富士山と北岳は上の方が冠雪していました。

・バスを下りてゆっくりと歩き始めました。やがて登山道となり,落ち葉の中を登っていきます。休みをとらず快調なペースで足を運べば,ほどなく上日川峠に着きました。

・上日川峠からは,南アルプスが望めます。新雪の北岳バットレスや,地蔵岳のオベリスクがくっきりと見えました。冷たい風が吹いてきたので,長兵衛荘でキノコ汁を食して一服しました。

・再び歩き始めればすぐに福ちゃん荘へ。そして今回は唐松尾根へ進みます。唐松の道はいつしか稜線南面のカヤトへと姿を変えて,遥か遠くまで見渡せるようになりました。

・やがて雷岩です。ここに来たらやはりトカゲを決め込むしかない・・・との思いは,吹きすさぶ西風によりもろくも打ち砕かれました。低気圧一過の冬型の気圧配置なのでした。

・稜線歩きも寒い寒い。それでも,南東の方角に前の週に登った丹沢・桧洞丸の姿を認めてニンマリ。やがて大菩薩峠に下り立って,介山荘にもぐりこみました。

・やがて日没。そして夜の帳が下りてきます。冬型のお蔭で,景色は澄み渡っていました。南アルプスの稜線がくっきりして,甲府盆地をはじめ,埼玉,東京方面の夜景もはっきりと見えました。

・翌朝,風はかなり弱まってきました。相変わらずの快晴です。富士山と南アルプスが近くに見えました。張り詰めた空気の中でご来光を迎えました。

・出発です。南を目指せば,まずはシラビソの中をゆっくりと登りにかかります。雲取山への登りと似たような雰囲気でした。熊沢山を巻けば,目の前が開けて,富士山が悠然と聳えていました。

・道が下りに掛かると,霜柱が溶けたぬかるみを歩くように・・・。あちこちで足を取られました。下りきったところが石丸峠。少し登れば牛ノ寝通り分岐です。正面には小金沢連嶺への道が熊笹にすっぽりと隠されていました。

・右に小金沢連嶺を見上げてから,道は北に向きを変えてやや急な下りになります。奥多摩の山々と小菅川が刻む谷が見てとれます。葉を落とした木々の向こうに雲一つない青空が広がっていました。

・道の上には落ち葉が積もっています。木の根も石ころもすべて隠され,登山道の窪みすら埋め尽くされていました。

・坂が緩やかになり,やがてほぼ水平な尾根道に。歩く速度をすこし緩めて,周りを見回しながら歩を進めました。相変わらず落ち葉は分厚くつもっています。ザクザクと音をたてて歩きつづけました。それ以外の音は何一つ聞こえませんでした。

・あれっ?と思い立ち止まります。そこに静寂が訪れます。再び歩き始め,不思議に思い再び立ち止まると,またしても静寂です。誰か人がいるのかな,それともシカかクマがいるのだろうか・・・違います。すべての音は自分の靴が立てていました。落ち葉を踏む音,それがエコーとなって耳に届いていたのでした。

・標高1400m付近より下部には,所々にカエデの紅葉が残っていました。他の木がすっかり落葉していても,カエデ類は遅くまで残っていることを知りました。「メグスリノキ」は葉の形がカエデらしくないのですが,れっきとしたカエデ科です。

・ほとんど起伏のない落ち葉の稜線が続きます。まったく飽きることがありませんでした。姿を絶えず変えながら,光を受けて輝いていました。特に,ショナメ付近の雰囲気が好ましく,落ち葉の上に腰を下ろしてしばし休んでしまいました。

・明るい稜線を行けば,樹木が伐採された大ダワに。北に奥秩父主脈が,南に雁ヶ腹摺山が望まれました。晩秋の光が降り注いで,身体を優しく温めてくれました。

・大ダワからは小菅へ向けて下り始めます。それでも,この素晴らしい落ち葉のプロムナードは続きます。いつまでもいつまでも続いてほしい,そんな思いを健気なほどにかなえてくれる道でした。

・木の間からはいつしか三頭山が大きく聳えているのが認められました。既に,奥多摩の領域へと差し掛かっていることを実感しました。

・下り坂がさらに急になれば,植林帯に入ります。間もなくワサビ田が現れて,小菅の集落に下り立ちました。

・のどかな山村の風景。しかし,どことなく丹波とは趣きを異にしていました。街道沿いに甲斐の国へと抜ける丹波に対して,小菅は行き止まりの道。単なる感傷なのかもしれません。

・バスを待つ間,近くの食堂に入りました。切り盛りするおばあちゃんの表情が柔和です。手打ち蕎麦の味に感動。特産の山葵を利かせて頂きました。

・外へ出れば,深い谷はいつしか日が陰っていました。おばあちゃんが出てきてバスが来るまで付き添ってくれていました。50年前に民宿を開業したときの思い出を語ってくれました。最後に,今度は泊りにおいで,と言ってくれました。また来たくなりました。

・バスは渓谷を見ながら走ります。やがて東京都に入って奥多摩湖畔を進めば,木々は紅葉していました。すべてに恵まれた山行のフィナーレを飾っていました。素晴らしい2日間を演出してくれたことに感謝の気持ちがこみ上げて,”ありがとう”の言葉をそっとつぶやきました。

G総括 ・2日間とも天気がよかったことが幸運でした。澄み切った空に展望,落ち葉の稜線漫歩,小菅での心温まるひととき,本当に印象深い,忘れられない山行となりました。

・牛ノ寝通りは人がそれほど多くなく,気がつけば周りの自然に同化している自分がいました。単独行の醍醐味を満喫できました。紅葉の名所を,敢えて時期をずらして落ち葉の季節に歩いたことも,よかったと思います。

・また同じコースを歩いてみたいと思いました。日の長い時期,例えば新緑の季節に,小菅から登りにコースを採るのもいいかもしれません。そのときは小菅前泊にしたいな。

H気付事項 ・牛ノ寝通りの入口は石丸峠から少し行ったところにあります。古い地図では,石丸峠から牛ノ寝通りへ入れるようになっており,実際に石丸峠にいくつもの踏み跡がありますがすぐに行き止まりになっています。5分くらいロスしました。

・大ダワから小菅方面へ下る道は,所々稜線の北側を絡みます。一部,足元の悪い箇所があり,真冬の凍結時には注意する必要がありそうでした。

 

大菩薩峠へと下る稜線
(遠く丹沢を望む)

南アルプスと暮れゆく甲府盆地
(白く曲がりくねっているのは笛吹川)

朝焼けの富士

牛ノ寝通りと奥多摩三山

米代付近からの小金沢連嶺

落ち葉の稜線を行く

紅葉(カエデ科・メグスリノキ)

明るい道(ショナメ付近)

 


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