月山(志津ブナ林トレッキング)、2022年5月3日(火)、天候:曇

コース:志津ネイチャーセンターを基点とするブナ林周遊ガイドツアー(周海沼付近まで)

残雪の峰の斜面をブナを主体とした広葉樹の芽吹きが駆け上がっていく

志津のネイチャーセンターを発着点とする無料のガイドツアーに参加した。芽吹いたばかりのブナ林を歩いて周回沼の畔を抜けてネイチャーセンターに戻る2時間半のトレッキングツアーは、寒の戻りで天候が安定しない中であったが、見所も多く、残雪と芽吹きという月山ならではのブナ林を堪能した。

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月山の志津エリアには残雪期にしか行けない見事なブナ原生林が広がっている。2013年の5月に行って以来、遠ざかっていたが、ゴールデンウィークに訪れることになった。「なった」、と書いたのは予め決めていたわけではなかったからで、実は酒田の沖に浮かぶ飛島に旅行する計画を立てていた。ところが、5月2日の午後に酒田港で乗船のためのチケットを買う段階になって、翌日の欠航の可能性が高いこと、更に翌々日は欠航の確率が更に高く、窓口の方曰く「渡航はお勧めしない」状況であった。欠航になればキャンセル料は取られないので、渡航は諦めた(この判断は正解だったのだが)。

酒田から急遽行き先を変更するため、宿泊地を当たっていたところ幸いにも月山の志津温泉の宿に空きがあることがわかった。この時期、春スキーのシーズンで混雑するはずなので意外だったが、後で宿に着いて確認したところ3月16日に発生した福島県沖の地震(M7.4、最大深度6強)の影響で、大斜面にクレバスが生じてしまい滑走エリアがかなり限定されてしまっていることが原因とのことだった。何はともあれ9年ぶりに訪れることになった春の月山、楽しむしかない。国道112号線で鶴岡から月山中腹の六十里越の峠に差し掛かると、残雪の中にブナの新緑が目に眩しい。月山湖から志津へ向けて登れば至る所にヤマザクラが満開で、残雪とブナの新緑に更に彩りを添えていた。志津の旅館に到着し、温泉に浸かって翌日に備えた。

ネイチャーセンターで無料のブナ林トレッキングを開催しているとの情報をゲットして5月3日の朝、志津温泉を出て車で坂道を登って行く。5分ほどでネイチャーセンターに到着したが、困ったことに風が強く雨が降り出していた。寒い西風が吹き付けて、雲が流れていた。姥沢のリフト乗り場まで行った人が、雪のため引き返してきたそうだ。時折、雨がザッと降ってくる中、ネイチャーセンターを出発。こちらは元々海仕様で防寒対策は心許ない。参加者は12人で、ガイドさんは1人。早速雪の上をツボ足で歩き始めれば、いきなり急斜面を登る。風で折れたブナの枝にはビッシリと花がついていて、どれが雄花でどれが雌花と詳しく解説してくれる。更に、急斜面を登って振り返ると、斜面を芽吹きが駆け上がって行くようなグラデーションが見て取れた。谷を挟んで奥側の斜面には陽が当たり、芽吹きの駆け上がりが見て取れた。

急斜面をすぎれば緩やかな台地が広がり、芽吹いたばかりのブナ林の淡い緑が海のように広がっていた。そして、上部の月山山頂方面は雲が被っていたが、霧氷のような感じで降ったばかりの雪が枝に着いていることが見て取れた。雨は上がったが西風が強く、雲が流れていた(山と海では違うのかもしれないが、これでは、飛島への船が欠航になっても仕方ない)。ガイドさんの解説を受けながら、台地の上を進んでいく。ハウチワカエデのピンク色の芽、風で折れた枝に寄生しているヤドリギの花、幹に刻まれて時間が余り経過していない熊の爪痕など、興味深い話を聞くことができた。

徐々にブナ林の奥に入っていくと、時折雲間から陽射しが射し込むようになってきた。見事な原生林が展開するようになり、幹と幹がかなりの距離を置いた状態で立っている。無雪期は一面の藪に覆われて全く歩くことができない。広い雪原の中のブナ林を自由に歩けるのは、月山ならではの豊富な残雪がなせる業だ。そして、豊富な残雪に生えたブナが緑色に芽吹いている光景は、何にも代え難い。緩いアップダウンを経て、周海沼の畔に着く。部分的に残雪が割れていて、水面が顔を出しており、そこに新緑のブナが映りこんでいた。

周海沼で休憩をとってからネイチャーセンターに向けて戻っていく。石跳川の谷間を見下ろす崖の上まで来れば、再びハウチワカエデやオオカメノキの新芽とタムシバの白い花を見る。オオカメノキの新芽は丸まった形で、葉が小さいときでもくっきりとしわが刻まれていた。ガイドさんの話に、へぇ〜、と感心する。青空と陽射しは長続きせず、すぐに曇ってしまうので、なかなかいい写真は撮れないのが残念だったが、最後の急斜面を下って満足のうちにネイチャーセンターに戻ってきた。ガイドツアー解散後に車で月山スキー場入口の姥沢まで上がったところ、激しい霰(あられ)に叩かれた。不安定な天候は最後まで続いた。



六十里越えの国道沿いのブナ林



志津エリアのブナ林
(こちらも新緑が目に眩しい)



ブナの新緑とヤマザクラの競演



芽吹き直後のブナ林
(上部は季節外れの雪)

ハウチワカエデの新芽
※Mackey撮影



落ちていた枝についたヤドリギ
※Mackey撮影



芽吹きのブナ林に分け入る



太い幹のブナが現われる
※Mackey撮影



熊の爪痕がくっきり



時折陽射しが降り注ぐ



周海沼の水面に映えるブナ林



原生林を行く
(木と木の間が広い)



ハウチワカエデとタムシバ
(奥は石跳川の対岸)



オオカメノキの芽
※Mackey撮影



芽吹きの台地を行く
(上部は時雨ている様子が伺える)

 


なんとも偶然の成り行きで浮上した「プランB」の山歩き。しかも、9年ぶりの月山となった。残雪と新緑のブナ林歩きは今回で3回目、この時季の月山ならではの魅力を改めて実感した。ホームグラウンドの栗駒山では、ここまでの豊富な残雪とブナの新緑の組み合わせはなかなか見ることができない。車から下りてすぐの場所に見られることが素晴らしいと思った。そして、そんな月山の魅力を下支えしているのが、ネイチャーセンターのスタッフであったり、以前に参加したことのある主催団体の「エコプロ」であったりと、脈々と積み上げられてきた運営体制だと思った。

今度は盛夏の花咲き乱れる月山を久々に歩きたい。このところ、毎年思っているのだがなかなか実現しない。今年こそは、歩きたいものだ。

2022.05.18. by TAKASKE

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