鳥海山(2,236m)、2019年08月13日(火)〜14日(水)、天候:晴れ

コース:鉾立−御浜−七五三掛−千蛇谷・外輪山分岐−(千蛇谷)−御室[宿泊](往復)

御浜から鳥海湖と外輪山を望む
※Mackey撮影

東北地方随一の秀峰と言える鳥海山。東北に移り住んで9年目にして初めてその峰に足を運んだ。盛夏の花、複雑な火山地形を感じながらの山行となったが、同時に厳しい残暑に地獄を見た山歩きと化してしまった。

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宮城県に移って9度目の夏を迎えた。まさかここまで長く居るとは思わなかったが、鳥海山の山行が実現できずにいたことが心残りとなっていた。僕は東京に居た16年前に登ったことがあるが、このときの好印象が脳裏に焼き付いている。鳥海山に一度も登ったことがないMackeyにも、是非とも体験させたいと思っていた。問題は、Mackeyが5年前に前十字靭帯を断裂した左膝。その大怪我以来、標高差は栗駒山などの500m程度までに留めていた。鳥海山はどのルートを採っても標高差で1000mを超えるため、Mackeyの足では日帰りは無理である。そこで、山頂直下の御室に泊まることにした。こうすれば、標高差500mの山を2日続きで登ると見立てることができる。2日目の標高差1000mの下りが気になるものの、早発ちで時間をたっぷり掛けることで対処できるだろう。

8月上旬までは猛暑続きだった東北地方も8日頃から寒気の流入で不安定な空模様となり、更に南から台風10号が本州に向けて北上しており影響が気になるところ。太平洋側は曇りか雨の予報が続いていたが、日本海側は10日頃から予報が好転した。今思えば太平洋側から吹き付ける東風がフェーン現象を引き起こすことを過少評価していたのだが、直前まで迷った揚句、決行することにした。

前日は移動日で由利本荘に泊まった。当日朝、車で鉾立へ移動する。間近で見る鳥海山は、やはり普段見る栗駒山よりも一段スケールが大きい。鉾立をスタートしたのは午前9時過ぎ。この頃は高曇りで時折陽射しが降る天候だったが、徐々に雲が取れてくる。スタートから森林限界を超えており、やがて陽射しも容赦なく降り注ぐようになる。それでも斜度は緩いので順調に足を運んで行く。賽の河原あたりではニッコウキスゲが多くみられ、そこからは多くの種類の花が目を愉しませてくれる。比較的順調なペースで鳥海湖が望める御浜まで辿り着き、ここで昼食。ハクサンシャジンやヤマハハコの群落が印象的だった。

昼食後に再び歩き始める。ハクサンフウロやトウゲブキが目立つ扇子森を越えると、眼前に外輪山の岩壁を目立たせた峰が迫り来る。思ったよりも距離を残しており、しかも見上げるような標高差をである。それでも、オクキタアザミやミヤマキンポウゲなどの咲き乱れる花々が目を愉しませ、暑い陽射しの中でもなんとか七五三掛まで辿り着いた。距離的にもコースタイムからも、全行程の半分を超えていたが、試練はここからであった。

七五三掛を過ぎると、急登が始まる。外輪山を一旦登り、千蛇谷への分岐から下る。この小刻みなアップダウンはMackeyの体力を大きく奪ってしまう。千蛇谷の雪渓を前にしてかなりの消耗だった。ここでとっておきのミカンの缶詰を開ける。これで体力と気力を回復したMackey。雪渓を横断し、千蛇谷のルートの登りにかかる。最初は傾斜も比較的緩く足取りが順調だったが、陽射しを背中に浴びる形となり、チャージしたエネルギーも再び低下しはじめる。ルートは徐々に斜度を増してきて苦しい時間が続いた。休憩の間隔が短くなり、4リットル運んだ水の残りもどんどん減っていく。当初は遅くとも16時頃には着くだろうと思っていた御室小屋も、登れども登れどもルートが続く。小屋が見えてからもなおも長く、余力も使い果たした17時半過ぎにやっとの思いで御室に到着した。

山小屋に泊まるのは10年前に北アルプスの蝶ヶ岳に登ったとき以来のこと。山小屋の食事はシンプルだったが、疲れた身体には美味しく感じられて翌日の下山に向けたエネルギーがチャージされたような感覚になった。日没をのんびり眺めたりする感覚も久しぶり。夜の星空も見事で、丁度この晩は満月だった。個人的には、19年前の雲ノ平で見た満月を思い出す光景となった。



奈曽渓谷の展望からスタート



渓谷を背景にウゴアザミ



賽の河原近くに多いニッコウキスゲ



御浜一帯は花の盛り



御田ヶ原から七五三掛を目指す



オクキタアザミ



ミヤマキンポウゲとハクサンイチゲ



千蛇谷を渡る。ここからが長い。
※Mackey撮影



イワベンケイ


チョウカイアザミ


イワブクロ


御室で日没を迎える


翌朝、4時を過ぎれば山小屋の中もざわついてくる。これも10年ぶりの感覚だ。小屋の外に出て日の出を待つ。七高山でご来光を拝む方法もあったが、外輪山の壁を下るときの危険を避け、余計な体力を消耗しないことを優先させて、小屋の前で”影鳥海”を待つことにする。連なる外輪山の壁が開けた向こうに日本海が見える。水平線が不明瞭で空と海の接するあたりは紫色に染まっていた。日の出前に見られる”地球の影”、これも澄んだ空気の山の上ならではだ。しかし、肝心の”影鳥海”は、東側に雲が湧いて陽射しが遮られていたようで、残念ながら見ることができなかった。

朝食を食べてから、新山の山頂や七高山には行かずに下山することにする。午前7時、千蛇谷のルートを下り始める。岩がゴロゴロのルートも朝のうちは岩が冷えているので心地よい。シラネニンジンとウゴアザミが特に大きな群落を形成している。膝を傷めているMackeyは、下りは慎重で出来るだけギャップの小さいコースどりで下る。小屋で購入したミネラルウォーターは2L。果たして下山まで持つだろうか?早くも登ってくる登山者とすれ違う。御浜小屋からと思いきや、鉾立から登ってきたという。日の出前後から登り始めたに違いない。徐々に陽射しが高くなり、攻撃性を徐々に増して降り注ぐ。千蛇谷の雪渓を渡るところで一休み。暫しの涼をとった。ここまでは比較的順調だったが・・・

雪渓を渡ればルートは急激な登りをとる。Mackeyのペースががくんと落ちる。外輪山の壁は一番の急登だったが、ハクサンシャジンやウゴアザミ、オニシモツケなどの見事なお花畑で、Mackeyを待ちながら写真を撮る。外輪山・千蛇谷の分岐に出て再び長い給水タイム。そこから、今度は急な下りとなり七五三掛へ。更に御田ヶ原分岐までは百花繚乱の道を行く。Mackeyの好きなハクサンイチゲとウサギギクも見ることができたが、すでにかなりの消耗を抱えていた。そこから先の扇子森を越えるルートは、風が吹き渡っていたが、一方で陽射しが容赦なく照りつけた。登り返しの足は重く、そこを過ぎても御浜までの下りは岩ゴロゴロで足の運びに苦労させられた。ミネラルウォーターの消費も思ったよりも早く、御浜小屋でさらに1.5L補充することにした。

御浜で昼食をとるが、最早、灼熱地獄と化していた。標高1700mあったが、体感的には30℃を超えるような下界のような暑さだった。Mackeyも相当身体に来ていた。ここまで来たらあとは単純な下りなので、順調に行くかと思ったが、容赦ない陽射しを浴びてバテバテ。足取りは重く、時間がかかるため余計に陽射しにさらされる。ミネラルウォーターも足りなくなるかもしれない、と、賽の河原で空になったペットボトル3本に水を補充したが、最終的にはこれに救われることになる。賽の河原から鉾立までは1.9km。これがとてつもなく長い。足の運びも重くなり、最早、熱中症一歩手前のMackey。日影の場所を見つけては熱くなった体温を下げるように休憩をとり、水をガブガブと飲んだ。このようにして7,8回は休憩をとっただろうか。やっとの思いで鉾立に辿り着いた。15時を回っていた。



日の出前、”地球の影”の幕引き



御室に咲くチョウカイフスマ



山頂はあきらめる



千蛇谷に向けて下山する
※Mackey撮影



シラネニンジンの咲く一帯



斜面一面に咲くシラネニンジン
※Makey撮影



アオノツガザクラ



ウゴアザミも群落を作る



千蛇谷雪渓で暫しの涼をとる


外輪山の斜面はお花畑


千蛇谷を背景にウゴアザミ


オニシモツケ


七五三掛近くに咲くトウゲブキ
 

ハクサンイチゲ


イワイチョウ 
 

ミヤマキンポウゲ


ウサギギク


チングルマの花穂


風に揺れるコメススキの群落
(御田ヶ原分岐近く)
 

鳥海湖、遠く庄内平野と日本海

これ以上時間を掛けたら、焼け付くような陽射しで本格的な熱中症になってもおかしくないほどの状態だった。鉾立の売店で冷えたドリンクを口にして、ようやく助かったと思った。下山後は鶴岡で1泊し、前から行きたかった庄内の食材を使ったイタリア料理の名店を堪能した。途中にある「道の駅 鳥海」で岩牡蠣の幟を見つけて、翌日には再び吹浦に車を走らせて、岩牡蠣を頂く。大ぶりの身がクリーミーで絶品の生牡蠣を味わった。その後、十六羅漢や湧水に立ち寄る。この日の庄内地方もフェーン現象で40℃を記録する地点があるほどの猛暑だった。  



吹浦の海岸



岩牡蠣を堪能



鳥海山の良さを実感することを目論んでいたのだが、灼熱地獄の山歩きとなってしまった。盛夏の花も多く、もっと涼しければ印象は違っていただけに残念だった。消費した水は登りで4リットル、下りが5リットル。消耗しきった身体に一番のエネルギー補給となったのは、ミカンの缶詰。あのときの回復ぶりは目を見張るほどで、これも勉強になった。

登り残していた鳥海山、登ってみると他の東北の山との違いは実感できたが、達成感という感覚は持てなかった。今は再挑戦することは考えられないが、いつか、もっとよい条件で登れるチャンスが巡ってくれば考えるかもしれない。一方で、今後は山小屋で宿泊するにしても、標高差600m程度の月山あたりが限度かなとも思った。今の自分たちのレベルに合った山歩きを愉しみたい。 

2019.08.22. by TAKASKE

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