栗駒山(世界谷地スノーシュー)2019年03月31日(日)、天候:雪

コース:世界谷地駐車場−世界谷地第一湿原−世界谷地第一湿原奥のブナ林(往復)

静寂の中の第一湿原

寒の戻りで雪が降る中、思い立ってスノーシューで世界谷地を歩いた。雪を載せた枝が美しいブナの二次林と、しんしんと雪が降りしきる静寂の湿原、そして枯れ花のサラサドウダンに綿帽子が被った姿も印象的であった。

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今まで経験した中で最も顕著な暖冬・・・そう思える冬は過ぎて春が順調にやってきた。アメダスの「駒ノ湯」の積雪は、前日には20cmで風前の灯火だ。しかし、前日になって低気圧が寒気を連れてきて40cmまで挽回した。この日も雪の予報でボタン雪が舞っている。本来なら家にこもっている日になるのだが、モノトーンの景色と枝に雪を載せたブナを見てみたいと栗駒山の世界谷地を目指す。今日はMackeyが外出しているため一人で行く。心配された行者滝の登り坂までは除雪されていて路面に積雪がなく、駒の湯十字路を折れれば路面に不規則な雪が残る。ちょっとスリップしながら、世界谷地入口の丁字路を折れる。駐車場手前400mからは降ったばかりの新雪で、四駆の馬力にモノを言わせて押し切った。なんとか世界谷地駐車場に着いた。

雪の降りしきる中を出発。一歩踏み出して、うわっ、と感じる。20cmほどの新雪だが湿っぽい雪のせいか重い。最初の斜面ですぐに息が上がる。スノーシューで歩くには良いとは言えないコンディションだ。何度も立ち止まっては息を整える。湿原へと続くブナの二次林に入ると、雰囲気が一変した。枝という枝に雪を載せたブナ林は、うっとりするほどの美しさを持っていた。いつも歩く何の変哲もないブナの二次林が、モノトーンの中に輝きを見せていた。それと同時に、第二湿原とその奥のブナ林まで行こうと思っていた自分の身体は、それを拒絶するように第一湿原へ行けとの指令を早くも脳に送っていた。こうして、第一湿原に行先を変更して、斜面を下りて行った。

第一湿原に足を踏み入れる。モノトーンの雪原に雪が降りしきる。初めて目にする風景だ。湿原を取り巻く樹林が雪に煙り、かすかに見える揚石山も消えかかっている。目の前に見えるのは、サラサドウダンなどの低木とクロベが数えるほど。風がほとんど吹いていないのが唯一の救いである。降りしきる雪に帰ろうかとも思ったけど、湿原を横断した先にある最も近いブナ林を目指すことに。樹林帯に入れば、足元に小刻みなギャップが現われた。ここ2日ほどの降雪の前には、残雪が割れていたことも想像され、踏み抜く危険がある。慎重に足を運びながら、ブナの大木を探して歩く。

目についたのは、前年に大当たりだったサラサドウダンの枯れ花。この上に雪が積もって、綿帽子を被る姿がまるで無数のキャンドルが灯るようだ。太いブナは何本かあったものの、ブナ林としての見事さはない。サラサドウダン以外にも低木も多く、その間を縫うように歩いた。雪の降り方が強まってきたので、そろそろ引き返す。単独だし、雪も降っているし、お昼は車の中で食べることにしよう。湿原を横断すれば一段と深まるモノトーンの世界で、静寂の湿原は濃厚な雰囲気を醸し出していた。迷わないように踏み跡を忠実に辿り、湿原を抜けてもそのまま止まることなく、駐車場へと足を運び続ける。

帰りのブナの二次林の姿は、一段と目を見張るほどで、雪を被ったブナの枝は、大袈裟な表現をすれば「仙台光のページェント」を見るようであった。ケヤキ並木にも似た向きの揃ったすべての枝に雪が載っていて、白い枝のラインは眩いほどの美しさであった。湿っぽい雪が激しさを増して、カメラにも容赦なく積もってしまい、これ以上の撮影が難しくなった。駐車場に駆け込むように戻って、車の中へ。濡れた荷物と装備を置いて、エンジンを掛けてから昼食をとった。雪の降りしきる駐車場を後にする。くりこま荘のお風呂も考えたが、更に積雪が増える予感がしたのですぐに下山し、築館の「たかもりの湯」で疲れを癒した。



いつものブナの二次林に入る



枝に雪を載せるブナ



第一湿原に踏み入れる



雪に霞む揚石山



第一湿原の奥のブナ林へ



ブナ林の木々の間を行く



雪の花が咲く森



サラサドウダンの枯れ花に綿帽子



眩いばかりの二次林を戻る


本当に前日に思い立ってのスノーシューだった。東京に住んでいた2002年の冬に、三国山稜のブナの森を歩いたときのモノトーンの景色を思い出して、慣れている世界谷地であれば単独でも歩けると思ったのであった。本当は第二湿原の奥にある立派な原生林、”ブナ爺”のあたりまで歩いてみたかったが、体力的に厳しかったので仕方ない。しかし、枝に雪を載せたブナの二次林や、枯れ花のサラサドウダンがキャンドルにも似た姿を見せてくれたり、幻想的な静寂の湿原は強い印象を脳裏に焼き付けた。

思い立って向かった世界谷地で、思い掛けず手にした早春の贈り物だった。そして、第二湿原奥の”ブナ爺”のあたりまでスノーシューで歩くことも来年の冬の目標になった。

2019.04.06. by TAKASKE

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