栗駒山(大地森コース)2018年10月21日(日)、天候:晴

コース:世界谷地駐車場−世界谷地第二湿原−変則十字路−大地森(巻き道)−御室−天狗平−栗駒山頂−(中央コース)−いわかがみ平

長い樹林帯を抜けて眼前に広がる景色に圧倒された・・・

栗駒山の登路の中で最も長大な大地森コースにようやく足を踏み入れた。コースを覆うブナの原生林は黄金色に輝いていた。長く続いた樹林帯を抜ければ、眼前には御室の岩壁を仰ぐ広大な草原が横たわり、栗駒山の本峰は控えめながら青空に優美な姿を見せていた。原始の雰囲気を留めるルートは、踏破を強く望む者だけに許されたとっておきの魅力を持って迫ってきた。道中で見掛けた熊の落し物は10個を超えた。疲労度もがっつりだったが、充実した山歩きとなった。

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大地森は、世界谷地から見上げる栗駒山の山体の中でも圧倒的な存在感を誇っている。しかし、ルートの長大さと「熊の巣窟」であることから、近寄り難い場所になっていた。そう、今日同行する山仲間と知り合うまでは・・・。地元に住む転勤族仲間の方が、私が山歩きをすることを聞いて、「世界谷地から登ろう」と誘ってきた。登るなら御室の雪渓が消える秋かな、と思っていたが、なんと約1ヶ月前のこと、岩手県の前沢での所用ついでに夏油温泉に行ったら、お風呂でバッタリ!そこで、湯船に浸かりながら計画のことを話したところから、この日の山歩きに至ったのであった・・・。

車2台で向かう。いわかがみ平に1台を残し、世界谷地入口の駐車場へ。熊鈴を3個用意して出発だ。朝7時半のこと。歩き始め、樹林帯の入口で早くもトチノキが黄色く染まってお出迎えだ。世界谷地第一湿原はパスして、第二湿原に入る。湿原は紅葉はほとんど見られなかったが、行く手に聳える大地森はブナが鮮やかに染まっている状況を余すところなく見せていた。第二湿原を抜ければ見事なブナ林が始まる。同行者もブナ林の見事さに満足している。いつもの「ブナ爺」も健在。染まり具合はまだこれからだが、一部は黄色くなっていた。変則十字路に着くまでに早くも熊の落し物を2個目にする。熊も活発な季節なのだろう。



世界谷地入口、トチノキは黄色



世界谷地第二湿原を歩く



これから登る大地森が色づく



第二湿原を過ぎてブナ林も染まる



変則十字路を出て大地森への登り坂が始まる。それまで、緑色がまさっていたブナ林が、にわかに色づきを増してきた。仰ぎ見る世界は、まさに「黄金色のステンドグラス」だ。最初始まった直登から、左方向へ曲がれば大地森を巻くトラバース路がひたすら続く。斜面に生えるブナは、すらっとした直立よりもワイルドな枝振りの木が多い。葉の色も微妙に木により、樹高により変化している。それらが青空をバックに輝いている。二人で自然とカメラを構える回数が増える。

足元は小さな沢を渡る小刻みなアップダウンと、少ない登山者ゆえの片斜面。道標が多い以外は、まさに「太古の姿そのもの」と言っても過言ではない。少しずつ高度を上げながら右に回り込むと、黄葉のピークは眼下に移って、ブナの木は徐々に葉を落としてきた。葉を落とした枝越しに、遠くの景色がかすかに見えるようになる。須金岳か禿岳だろうか。長く続く登り坂に息が荒く、一休みすると身体が寒い。まだまだピークを巻く道の半分も行っていない。



変則十字路からの登りが始まる
(鮮やかさが急に増してきた)



黄金色のブナの葉



黄葉のブナが林立する



登山道脇にワイルドなブナ



カエデも黄金色に輝く



ワイルドなブナを仰ぐ



トラバース道が向きを変える辺り



隣の斜面もブナでビッシリ


再び歩き出す。ブナ林は葉を徐々に落として、オレンジ色から茶色に色合いが移る。更にトラバース道は右に回り込むように続き、谷筋を隔てた向かい側に虚空蔵山から続く斜面が燃えるように染まっていた。トラバース道は登り勾配から水平に変わり、右側の尾根が低くなってきて、大地森を巻いたことがわかる。尾根道に出てから平坦な広い場所を行くようになると、クロベの大木が所々に見られる。ダケカンバも時折目にする。このあたり熊の落し物を多数見る。中には臭いが立ち上っているものも・・・。ブナの木は背が低くなってきたが、それでも所々に太い幹が見られる。

道が再び登りに転じれば、背後に通り過ぎた大地森が見て取れた。なおも登りは続き、ルートの長大さが身体に応えた。このあたりから、同行者にも後れをとるようになるが、マイペースを保ちながら写真を撮りながら歩いた。時折ナナカマドの赤い実が揺れる。葉をすっかり落としたドウダンツツジの実も目立つ。ブナ林はなおも続き、すっかり葉を落とした幹を見上げる先に青空が降り注ぐように広がっている。右手には栗駒山本峰が見え隠れしながら近づいてくる。左手には虚空蔵山が頭をもたげていた。なおも登り続け、岩がゴロゴロして足元が不安定な一帯を抜ければ、突然、目の前が開けた・・・



大地森のピークを巻くあたり
(葉を落とし始めたブナ)



平坦なあたりにはクロベも多い



なおも登り続ける



樹間から栗駒山の本峰がのぞく



青空とナナカマドの実



樹林帯もあと少しで終わる

 



行く手に草原が広がり、仰ぎ見る先には御室の岩壁が聳えていた。右に目を転じれば、栗駒山の本峰が遮るものもなく姿を見せていた。山頂は北風が吹き付けて雲が湧いていたが、引き締まった山容が青空にスカイラインを描いていた。それにしても、目の前に広がる草原に岩壁、ここに来ることが出来た者だけが目にするとっておきの風景だ。ここは、初夏には”駒姿”を浮かび上がらせ、夏の遅くまで雪渓を残す場所であった。雪が溶けたあとに広がる草原を風が吹き抜けていた。

ここから草原を抜けて表掛コースを合わせると、いよいよ御室の岩壁への登りが始まる。苦しい登りが続くが、栗駒山本峰を右手に仰ぎながら懸命に足を運んだ。同行者からも遅れながら、ようやく御室の岩壁に辿りついた。駒形根神社の奥宮の祠が鎮座する岩室の傍で、足を投げ出しながら登ってきたルートを目で追っていた。ブナ林の染まる中、ぐるっと巻いてきた大地森は眼下に、その先に目をやれば”ブナの樹海”が覆う山麓の一角に、T字形の木道がくっきりと浮かんだ世界谷地第二湿原を認める。同行者と「あそこから登ってきたのか・・・」、と二人で感慨にふけっていた。



見上げる御室の岩壁



本峰を仰ぎながら岩壁を登る



駒形根神社奥宮の祠



眼下の大地森



中央コース上部は紅葉終わり



東栗駒山の尾根はブナの黄葉



御室から天狗平までは、トラバースのショートカットルートを経由して登りつく。あとは山頂へとゆっくりと足を運ぶ。そこからはいわかがみ平へ向けて中央コースを下るだけ。”神の絨毯”だったのは3週間前。ドウダンツツジの紅葉は、今はすっかり散っているが、風が徐々に収まって気持ちの良い秋晴れだ。さすが中央コース、ハイカーが次々に登ってくる。知人にもバッタリ出会う。コンクリートの道は足に応えた。いわかがみ平に下り立ったのは午後1時半過ぎ。世界谷地に車を回す。紅葉(黄葉)は、いわかがみ平と旧いこいの村の間がピークだった。世界谷地駐車場で車を回収し、新湯温泉くりこま荘へ。露天風呂で疲れを癒した。


秋晴れの中、充実感満点の山行を満喫した。大地森コースのルートは終始濃密で、太古の姿を留めていた。ブナ林の見事さは、黄葉の最盛期にあうことにより、一段と印象深さを感じさせた。世界谷地第二湿原から変則十字路までの直立したブナとは異なるワイルドな姿の大木に埋め尽くされていた。そして、そのブナ林の足元に見られた十を超える熊の落し物の数々・・・。樹林帯のロングルートを抜けた先の景色もまた素晴らしく、栗駒山の魅力を余すところなく見せてくれた。

この日は大地森コースを歩く二度とないチャンスだった。それを実現できたことが何より嬉しかった。歩いたばかりの今、栗駒山のルートで大地森コースがNo.1と言うことができる。同行者に感謝するばかりである。以前に一度だけ歩いた湯浜コースも素晴らしかったが、それと比べて大地森コースはかなり個性的なトレールだと感じた。同時に、湯浜コースを再び歩いてみたいと思うようにもなり、同行者にも提案した。未踏のルートは表掛コースのみとなったが、果たして歩く機会は訪れるのだろうか・・・

2018.10.24. by TAKASKE

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