八甲田山(赤沼)2017年10月14日(日)、天候:晴

コース:仙人橋−赤沼(往復)

赤沼の畔に立つ・・・

八甲田山中にひっそりと佇む赤沼。ブナの森を抜けた先に、陽射しを受けて輝く木々が澄んだ水面に映えていた。まさに紅葉のピークを迎えた奇跡のような光景であった。

※写真はすべてクリックすると別窓で拡大表示されます。


その思いは、回帰熱のように、そして衝動的に私を包み込んだ。5年前、八甲田山の大岳に登り、蔦温泉に浸かり、翌日は蔦の森を歩いた。当時、私にとっては10年ぶりの再訪だったが、赤沼だけは再訪できずにいた。遡ること15年前の初夏、東京に居た私は疲れた心と身体で北に向かい、必然のような偶然の果てにこの場所に辿りついたのだ。そして、沼の畔に一人佇んでいた1時間余り、答えを求めていたような心が少しずつ、少しずつ、解き放たれて行くのを感じていた。今でも私にとって最も印象的な山行の一つとなったが、当時も「近いうちに来るかわからないけど、きっとまた訪れる」そう書き綴った。5年前行き残した場所、Mackeyにも見せたかった場所、紅葉の時期にどうしても訪れたい・・・。

直前まで、天気予報は思わしくなく、泊まりたかった蔦温泉旅館は満室だったが、約30kmの場所にある十和田市の宿を押さえることができた。当日、予報は良い方に修正され、朝7時過ぎに出発。これでも早い方だ。東北道を北へ向かえば、岩手山SAを過ぎた頃から晴れ間と青空が広がってきた。八戸道に入ってなおも走り続ければ、周りの山々の斜面が色づき始めている。下田百石ICから下りて一般道へ。国道45号から十和田市の中心街を通って国道102号を山へ向かう。行く手に、裾野を真っ赤に染めた南北の八甲田連峰が展開していた。奥入瀬川沿いに走るようになれば少しずつ高度を上げて行くようになり、やがて大半の車が奥入瀬渓流へと向かう分岐を、蔦温泉へと進める。

天候はまずまずの晴れ。蔦温泉へと高度を上げれば、ブナの森の中を通るようになる。陽射しが射し込めば、黄葉が始まった森が輝く。見事なブナの森だ。蔦温泉を過ぎてなおも高度を上げれば蔦トンネルを抜けて目的地の仙人橋。12時を過ぎた時刻で、駐車場に空きスペースを見つけて車を止める。沢沿いの木々は色づきがよく、紅葉(黄葉)のピークも近い。出発前に早くも写真タイムだ。登山靴はまだ入院中でジョギングシューズにスパッツを装着して歩き始める。

沢沿いの崖のような急登を一登りすれば。あとは平坦に近い緩い登りが続く。辺りはすぐに見事なブナの美林が展開する。しかし、沢沿いとは違ってまだまだ青い葉を残している。時折、ぬかるみに出くわし隅の方を歩くが、ジョギングシューズなので容赦なく水が浸入してくる。気にしてても仕方ない。それよりも、周囲に広がるブナの美林と、15年ぶりの赤沼の光景を想像しながら足を運ぶ。陽射しは時折翳りながらも、ふわっと光が降り注ぎ森全体が輝く瞬間がたまらない。ブナ林は徐々に染まってきて、赤沼から流れ下る沢音が近づいてくる。そして、沼を縁取る柵のような笹薮を抜ければ、待ちに待った光景が目に飛び込んできた。

あのときと同じ静寂の中、半逆光の太陽光を反射させた湖面。そして、湖岸から奥の山肌にかけて喩えようのない鮮やかさに染まっていた。これが現実か、と思わせるほどに絵画的ですらあった。少しずつ場所を移しながら、構図を変えながら、ひたすらに写真を撮りまくった。特に、水面につきそうな1本の木(おそらくブナと思われるがコシアブラかも)が一際黄色く輝いていたのが印象的であった。振り返ると、背後のブナ林は順光に輝いていて黄色からオレンジ色に染まり、足元の笹の緑との三段に染まる様子もまた素晴らしかった。Mackeyも狂ったように写真を撮りまくっていた。答えを求めていた頃の孤独感はなく、同じ光景を共有できる人がいる喜びと安堵感があった。倒木の幹に腰かけて昼食をとり、再び写真をひとしきり撮ってから引き返すことにした。

帰路は陽射しが翳りがちで、写真を撮りながらも淡々と歩いた。仙人橋に着けばすぐに蔦温泉へ移動。14時半過ぎ、日帰り入浴は16時までなので急ぐ。蔦温泉は駐車待ちの車が何台もいたが、場内で停止することができず、ガードマンに促されて一旦外に出る。再び入場したときに偶然、近くに駐車していた車が出たので滑り込む。待望のお風呂、まずは「久安の湯」へ。板張りの浴槽に入り足元から自噴する透明で優しい湯に身を委ねた。底板の隙間から時折プクプクと泡が上がってきた。次に「泉響の湯」へ。こちらも足元からの自噴である。見上げれば天井が高く、太い木組みの梁が印象的。癒される時間で、やはり泊まって何度も浸かりたいお風呂であった。

蔦温泉を15時45分に出れば、次は17時までやっている谷地温泉へ。こちらは今まで入ったことがなく、どうしても行ってみたかった場所。欲張りプランは最近の行動パターンだ。国道103号線を高度を上げて行けば、ブナの二次林が徐々に染まってきて、やがて夕陽に照らされて燃えるように輝くようになる。所々に車を停めて写真を撮っている人がいた。我々も路肩に広い場所を見つけて車を停めて写真を撮った。そこから谷地温泉は目と鼻の先、温泉の目の前にあるのは「谷地湿原」。なんだか、「湿原湿原」という意味で変な感じだが、ともかくお風呂に入る。こちらは温めのお湯で、ほのかに甘みも感じる硫黄の香りに包まれた。栗駒山の「駒の湯」に近い。温湯と熱湯に交互に浸かった。




仙人橋の駐車場周辺
(ブナが染まっている)



陽射しに輝く沢沿いのブナ
(仙人橋駐車場)



まだ青々としたブナの森
※Mackey撮影



少しずつ染まってくる
※Mackey撮影



太古からの佇まい、輝き
※Mackey撮影



三色に染まるブナの森
※Mackey撮影



この日一番の輝きを見せる


 
湖面を染め上げる森



澄んだ岸辺とブナの落ち葉



帰路、陽射しが翳る



続く美林は黄葉のピーク前



仙人橋からの眺め
※Mackey撮影



蔦温泉に立ち寄る
(優しい湯に浸かった)



燃えるようなブナ林を車で行く
※Mackey撮影



谷地温泉付近のブナの黄葉



夕刻の谷地湿原



谷地温泉の秘湯に浸かる

 

 



谷地温泉を後に十和田市内の宿に向けて車を走らせる。十和田市街はなかなか手頃な町で、お店もそこそこありそうだ。Mackeyが選んだ居酒屋に入る。青森の代表的な「田酒」のほかに、地元の無印のお酒が何種類も置かれていた。美味しいお酒とお料理を愉しんだ。

翌朝、再び八甲田方面に車を走らせる。この日は八甲田連峰は雲が掛かって時雨れている様子が見て取れる。再び蔦温泉を目指し、蔦温泉の駐車場に車を止めたら、「沼めぐりの小路」に入る。すぐに蔦の森のブナ林が広がる。まだまだ緑の葉をつけていたが、実に見事な美林である。陽射しがないのが残念なくらいだ。やがて目の前が開けて蔦沼が現われた。沼の周囲は一面のブナ林だが、ここも紅葉(黄葉)のピークはこれからであった。陽射しが射し込む時間はわずかで、風が強いため早々に引き返す。蔦温泉の手前にある林間の小さな池が黄葉の始まったブナ林を映しだしていた。

蔦温泉を後にすればあとは欲張りプランの開始。奥入瀬渓流を目指す。こちらも紅葉は始まったばかり。石ヶ戸で車を止めて、雲井ノ滝まで約3kmの区間を渓流を横に見ながら歩いた。トチノキの葉が黄色く色づき、カツラの木は独特の甘い香りを漂わせていた。陽射しは時折降り注ぎ、森と渓流が輝く様子は素晴らしいが、ピーク時の黄金色の輝きは相当なものだろう。雲井ノ滝からは路線バスで石ヶ戸まで引き返して、ここからはドライブ。銚子大滝を見て十和田湖へ。湖岸は紅葉していたが、展望台から見下ろした湖は、ガイドブックのようには綺麗に撮れない。やっぱり、今回の旅で一番印象的な景色は、陽射しに紅葉が輝く赤沼であった。




蔦の森はまだまだ葉が青い



蔦沼は染まり始め



わずかに染まるブナ林を映す



鮮やかな部分を切り取る
※Mackey撮影



奥入瀬渓流も染まり始め
※Mackey撮影



渓流は様々な表情を見せる
※Mackey撮影



夕刻、十和田湖にも立ち寄る
(発荷峠展望台より)
※Mackey撮影


 
湖岸は紅葉していたが・・・
(鮮やかに撮れない)




念願の赤沼再訪を果たすことができた。そして、まさに一番の輝きを見せてくれた。知る人ぞ知る、しかし私にとっては大切な場所、静寂に包まれた太古からの風景。本当に来てよかった。周囲のブナ林もまた、黄葉のピークには早かったものの、美しさは変わらずであった。「地元」の栗駒山のブナ林も美しいが、蔦の森や赤沼にかけての佇まいはまた独特のものがあった。満足ではあったが、またそのうち蔦温泉に泊まりながら歩いてみたい。(しかし、今回泊まった十和田市の中心もまた別の意味で魅力を感じてしまった・・・)

今回は山行というよりは観光に近かったが、八甲田山のエリア一帯はこういう愉しみ方もある。もう少し日数を掛けて、例えば、仕事をリタイアした後でゆっくりと過ごすのもよいだろう。山歩きを始めたのが20代の頃。今はもう、50代になってしまった。リタイアなんてまだ早いけど、歳をとって体力が落ちてきても来ることのできる場所だと思う。やっぱり、今回で最後にはしたくない・・・

2017.10.22 by TAKASKE

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