栗駒山2016年10月16日(日)、天候:快晴

コース:旧いこいの村跡駐車場−新湯(渡渉点)−ドゾウ沢−東栗駒コース合流点−東栗駒山−いわかがみ平

裏掛コースの樹林帯を抜ければ東栗駒山から派生する尾根の木々が黄金色に輝いていた。

3週連続で紅葉の栗駒山を目指した。今回は、初めての裏掛コースを登りにとり、東栗駒コースを下山ルートに選んだ。登り始めはまだ青葉を残していた樹林帯が高度を上げるにつれて赤、黄色に染まり、樹林帯を抜ければ錦繍の斜面を見ながらのルートとなった。大規模に崩壊したドゾウ沢源頭部は息を飲むほど。そこを越えてからは静けさに包まれた奥庭ともいえるエリアで、栗駒山の別の一面を見ることができた。

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相変わらず栗駒山へのアプローチは、車が全国から集まってくる。午前8時を過ぎていわかがみ平の駐車場はすでに満車。旧いこいの村跡の駐車場入口で、ガードマンに半強制的に左折させられる。裏掛コースのスタートは道路を挟んだ反対側なので、右折になるのだが有無を言わさない。準備をして出発しようと裏掛コース入口へ道路を渡ろうとすると、ガードマンがバス停はこちらとばかりに手招きする。「裏掛コースから登るんですよ」と言うと一瞬びっくりされた。見上げる斜面は朝日に輝いていた。いい具合に染まっており、楽しみだ。

新湯沢へ向けて下りていく。沢音が谷間に響き渡る。渡渉点に着けば、水量は少なく、スパッツを履いているので問題なく渡れた。そのすぐ先に新湯の源泉が湧いていた。手を入れると温く、周囲には硫化水素の臭いが立ち込めていた。そこから鬱蒼とした樹林帯の登りが始まった。最初はブナの木もまだまだ青い葉をつけている。登りは緩急織り交ぜて続く。すぐに息が上がり、心臓がバクバクしてくる。今日は単独行。一人ではどうしてもペースがオーバー気味になるので、意識してゆっくりと足を運び、10〜15分ごとに小休止をとった。聞こえるのは鳥の鳴き声だけ。ヒンヤリとした爽やかな雰囲気に包まれて登り続けるが、気になるのは熊さんの存在。鈴をザックに2個括り付けて歩く。

高度を上げれば陽射しが降り注ぐようになり、ブナのほかにカエデの木も染まり始めてくる。いわかがみ平までの車道を走る車の音が時折響いてくると、樹間からは紅葉に染まった斜面が見えるようになる。赤や黄色に染まった山肌が青空をバックに光り輝いている。少しずつ調子が上がってきて、思ったよりも早く樹林帯を抜けた。目に飛び込んできた世界はまさに陽光に輝く栗駒山の大斜面だった。周りは一面の紅葉。赤色と、そして、黄色というよりは黄金色に輝いている世界が広がっていた。見上げる左側は後で確認したら、東栗駒山から派生する尾根だった。青空と尾根を縁取るような黄金色が、とりわけ印象的なシーンとなった。腰を下ろして少し長めの休憩をとった。



スタート直後、紅葉の山肌が誘う
(期待に胸膨らむ)



新湯の渡渉点



コシアブラの葉



ブナの大木も現れる



高度を増せば色づき始める



錦繍の山肌が視界に飛び込む



染まるブナの大木



樹林帯を抜けて視界が開ける
(一面の紅葉が広がる)



再び歩き始めれば、斜面のトラバース道となりながら、東栗駒山からの派生尾根に向けて登る。振り返れば、旧いこいの村跡の臨時駐車場からいわかがみ平までの車道が見渡せて、いわかがみ平とほぼ同じ高度まで登って来たことがわかる。派生尾根を越えたら雰囲気がガラッと変わり、車の音が消えて、派手な紅葉の斜面よりも草紅葉が増えてくる。ここまで誰も会わずにいたが、樹林帯にいるときよりも孤独感と緊張感を感じるのは、このコース最大のアクセントであるドゾウ沢源頭部の横断が近づいてきたから。遠目には単なるガレ場の斜面に見えるが、徐々に緊張感が高まってきた。足元から切れ落ちるように広がるドゾウ沢は大きく口を開けているようだ。そして、ついにガレ場を目の前にした。

岩手・宮城内陸地震で、駒の湯へと流れ下った土石流の発生地点、7人もの命を奪った大規模な崩壊はここから始まった。気持ちを落ち着けるように目を閉じて手を合わせてから、一歩を踏み出す。目線は下に、自然と歩みは速くなる。枯れ沢のように見える源頭部のガレ場は、無数の細かな水の流れを伴っていた。半分あたりまで来たとき、歩みを止める。見上げる地すべりの斜面、そこかしこに転がる今にも動き出しそうな巨大な岩塊、8年前に発生した戦慄の光景を思い起こすのに十分な姿を今に残していた。撮ってはいけない、しかし、撮らなければならない・・・相反する2つの揺れる心のまま、シャッターを切った。そして再び、濡れて不安定な足元をロープを頼りに渡りきった。振り返り再び手を合わせた。ドゾウ沢に落ち込む派生尾根は対照的に鮮やかに輝いていた。



ようやくいわかがみ平の標高



派生尾根を越えた先に 



ドゾウ沢崩壊地に息を飲む
(手を合わせてから横断した)
 



岩手県側の尾根に残る紅葉 



振り返る派生尾根の紅葉(黄葉)

 



先を急ぐ。ここからは穏やかなトラバース道を歩き、所々に小さな沢を横断した。岩手県側の紅葉の斜面を横目に見ながら行くと、季節にはお花畑になる斜面を行く。反対側から人がやってきた。このコースで初めて人と会う。何と、須川に下るつもりが迷い込んでしまったとのこと。宮城県側に続いている道と知って驚いていた。磐井川の源頭部の小さな沢を幾筋も横断した。紅葉はすっかり落ちて、静けさが残る一帯を行く。遠くに早池峰山のピークが見える。逆転層で煙霧が形成されていた。笊森避難小屋を横目に回り込むと道は再び登りに転じる。広大な斜面を見ながら登れば、枯草の斜面の先に栗駒山の山頂がようやく姿を見せた。斜度が緩くなれば東栗駒コースとの合流点に辿りついた。約3時間半かかった。



笊森避難小屋と焼石連峰



早池峰山もくっきり
(逆転層で煙霧が形成されていた)



キンコウカの枯れ花
(さぞかし壮観だったはず)



ドウダンツツジの紅葉が残る 



栗駒山の山頂がようやく視界に入った 



東栗駒コースから山頂
(紅葉は終わっている)



混雑している山頂に立つ必要はまったくなかった。2週間前に登りに取ったルートを下り始めた。東栗駒山までの稜線からは、野焼きの煙が漂う栗原市の田園地帯が見渡せた。東栗駒山を過ぎれば、紅葉真っ盛りのいわかがみ平へ向けて下り続けるだけだった。シャトルバスで臨時駐車場まで下りてから、久々に「新湯温泉くりこま荘」の湯に浸かった。



栗原市の方向(立ち上る野焼きの煙が漂っている)



いわかがみ平は紅葉に染まる



紅葉のグラデーション
(右奥は駒の湯の崖崩れ)



大地森と遠く船形連峰



カエデの紅葉
(いわかがみ平も近い)




素晴らしい紅葉山行となった。中腹歩きも含めて31回目の栗駒山で、初めての裏掛コース。東栗駒コースや中央コースの展望やお花畑ももちろん魅力的だ。しかし、樹林帯から登り始め、樹林帯を抜けて展望の道を行く、これが栗駒山の持つ最大の魅力を体感する方法である。2年前の湯浜コースもまさにそんなグレードの高いコースであった。もう一つ、岩手県側の笊森に近いエリアは、のびやかさに包まれていた。恥らいながら受け入れてくれるような雰囲気で、初夏から夏にかけては、まさに「秘密の花園」といった雰囲気だろう。本当に想像通りの、いや、想像以上の魅力的なコースであった。今度は花の時期に歩いてみたい。これで残るのは表掛コース(御沢コース)と大地森コースの2コースとなった。いずれも上級者向け、果たして機会は如何に?

裏掛コースで最大のアクセントであるドゾウ沢の崩壊地は、心を平坦にして渡ることが難しかった。しかし、これは登る前からわかっていたこと。目をそらしてはいけない、この目で見ておかなければならないと思った。駒の湯温泉の方々の気持ちを思い、痛ましい光景に気持ちの整理はつけられなかったが、歩いてよかったと思った。

2016.10.19. by TAKASKE

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