蝶ヶ岳、2009年10月11〜12日

ース:三股−力水−まめうち平−蝶沢−蝶ヶ岳[泊]−(往路下山)−三股

槍穂高連峰の大パノラマ

槍穂高連峰の展望台として有名な蝶ヶ岳に、三股から往復した。2日目の朝、見事な大パノラマを目にすることができ、念願が叶った。間近で見た槍穂高連峰の姿は、鮮やかに染まる様子だけでなく地形的な魅力にも満ちており、飽きることのない時間を過ごした。

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第1日:10月11日、天候:晴のち曇・霧

10月の3連休は初日の朝、鈍った身体にムチを入れるように伊賀を出る。名古屋を過ぎて中央道を分け入って行く。行き先は、9月の4連休に回避した蝶ヶ岳。4連休よりはマシ、とはいえ短い渋滞には何度かつかまる。長野道に入り、梓川SAで遅い昼食をとる。豊科ICで下りて、初日は安曇野観光で翌日からの山行に備えることに。碌山美術館と山岳美術館で観賞した。

翌朝、6時半に宿を出ると、盆地一帯が霧に包まれていた。三股へ向けて急ぐ。しかし、やはり思ったよりも現実は厳しく、奥の駐車場はすっかり満車。少し戻って、何とかスペースを見つけて滑り込んだ。

戻った車道を歩いて行けば、行く手に常念岳が見えてくる。三股に着き、登山計画を提出して登り始める。沢沿いの道は紅葉(黄葉)が始まり、清々しい。サワグルミやカツラの大木が立っていて、カツラの木は甘い香りを漂わせていた。大した労力もなく「力水」に着く。ここからは緩急を繰り返すテンポのよい登りが続き、常念岳や安曇野が時折木の間から望めた。まめうち平に着いて昼食をとった。

ここからはしばらく平坦に近い道が続く。いつしか亜高山帯に入り、奥秩父や南アルプスのようなしっとりとした雰囲気が漂う。所々にナナカマドなどの紅葉が見られ、何よりも目を愉しませてくれたのは足元に点々と見られたゴゼンタチバナの赤い実であった。やがて徐々に斜面が急になり、急登の様相を示してくる。そしてトラバース道に移行して蝶沢を過ぎれば再び急登が始まった。辺りはガスに包まれて、この急登は長く感じられた。

樹林帯が疎らになってきてガスが切れ始めた頃ようやく大滝山への分岐に出て、そこから蝶ヶ岳まではわずかであった。重い身体を引きずるようにして蝶ヶ岳ヒュッテに辿り着いた。荷物を置いて一休みしたあと外に出ると、太陽は前穂高岳に沈もうとしていた。太陽が前穂に隠れると、急に冷え込んできた。ふと振り返れば、東側に敷き詰められた雲海に、穂高連峰の影が映っていた。

碌山美術館

三股から常念岳を仰ぐ

紅葉始まる沢を渡る

自然林の中を行く

平坦な針葉樹林帯を行く

ゴゼンタチバナの実が目を引く

前穂に沈む夕陽

日没の槍穂高連峰

東の雲海に穂高連峰の影

穂高連峰のシルエット

槍のシルエット

常念岳と滝雲


第2日:10月12日、天候:晴

朝、気付けば周りに人がいない。慌てて窓の外を見れば、日の出が近い雰囲気を感じた。カメラ片手に外に飛び出した。幸い太陽はまだ出てきていない。山で迎える朝はいつも清々しい。安曇野には靄がかかり、頸城三山や戸隠連峰、志賀高原、浅間山と信州の名だたる山々が浮かんでいた。その奥に連なる八ヶ岳連峰とは久々の対面。八ヶ岳の奥には雲海が敷き詰められ、南アルプスと富士山がくっきりと浮かんでいた。

槍穂高連峰全体がモルゲンロートに染まる様子は、喩えようのないほど惚れ惚れするものであった。その中でも、槍ヶ岳が一際気高い姿を見せていた。

朝食を済ませてから再び景色を眺める。抜けるような快晴の空の下、欲しいままの展望を愉しむ。南に目を向ければ乗鞍岳と木曽御嶽が競うように巨大な山容を見せている。穂高連峰の左側には、焼岳がちょこんと座っている。そして、目の前の槍穂高連峰はすべてを曝け出してくれていた。

槍穂高連峰の山腹は、いい感じに染まっていることがわかる。そして、何よりも惹かれたのは、「氷河が創り出した造形美」である。涸沢や横尾本谷などのカール群はその曲線を稜線まで延ばして形づくっている。槍ヶ岳は槍沢のU字谷を抱えこんでいる。そして屏風岩は鋭角的な峰々とは対照的にずんぐりとした姿でいながら、磨かれた痕跡を露出させている。そして梓川が流れる谷間もまた淡いながらもU字を形成していた。

槍ヶ岳の右側、北西の方角には白い峰がわずかに認められる。どうやら立山のようだ。北に目を転ずれば、常念岳が近くに見える。まるで手招きするような姿である。行きに仲良くなったご夫婦は、前の晩にはそのまま三股ピストンするとおっしゃっていたが、常念岳を回ることにしたという。また3人組は意見が分かれて、1人はどうしても常念へ行きたいと言い張って蝶ヶ岳山頂で解散になった。私も迷ったが、翌日に東京出張することになっていたため、無理せず予定通りに下山することにした。

もう少し、もう少し、と粘りながら、何度も撮ったようなショットを繰り返す。そして、この目で見届けたところでついに心を決めて下山にかかる。来た道を下るのは、安心できる。前の日にマッサージを入念にしたせいか、快調だ。槍穂高連峰の姿が見えなくなると、雑念もなく歩ける。時々は写真を撮りながらも、順調な足の運びで予定通りのペースを刻めた。

下山して駐車場に戻ったのは正午過ぎ。温泉に浸かった後、池田町まで行って蕎麦を食べて、「蔵久」でかりんとうを食べてから伊賀へ帰った。しかし途中で車の調子が気になったり、渋滞にはまったりして、伊賀へ着いたのは午後11時を過ぎてしまった。

日の出前、富士山が顔を出す
(右は南アの鳳凰、甲斐駒)

八ヶ岳連峰のシルエット

モルゲンロートに染まる槍穂高連峰

気高く染まる槍ヶ岳

ヒュッテ裏の蝶ヶ岳山頂に立つ

乗鞍岳と木曽御嶽

焼岳

穂高連峰と涸沢

槍沢のU字谷を従えての雄姿

三股へ向けて下る

輝きを放つダケカンバ

常念と前常念を仰ぐ

振り返る常念

有明山


今まで何度も計画しては流れていた蝶ヶ岳にようやく登ることができた。今回の山行は、ピークを踏むことよりも「景色を見ること」が目的だった。だから、常念岳に登らなかったのは多少心残りではあったが、今回は蝶ヶ岳にこだわっていたので、十分満足できた。

ここからの景色を見る前に槍ヶ岳に登れない、という少し変わったこだわりを持っていた。だから、これで心置きなく槍ヶ岳に登れる。Mackeyにとっては蝶ヶ岳は3回目で槍ヶ岳にも登ったことがある。しかも、過去2回の蝶ヶ岳では、いずれも体調を崩しているという。だから、Mackeyは余り乗り気ではなかったが、たまにはこういう我がままも許してもらおう。今回の山行で、「蝶ヶ岳運」の悪さも払拭できたのだから。

やはり、こうして見ると、槍・穂高は北アルプスの中でも特別な存在だと、つくづく感じる。できれば来年、槍に登りたいな。どういうルートで歩こうかな・・・どんどん想像が膨らむ。

2009.10.25. by TAKASKE

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