鹿島槍ヶ岳(2,889m)、2009年8月14日〜16日

コース:扇沢−種池山荘−爺ヶ岳−冷池山荘[泊]−鹿島槍ヶ岳−冷池山荘−爺ヶ岳−種池山荘[泊]−扇沢

迫る鹿島槍の双耳峰と深く刻まれた岩壁

後立山連峰の中で際立つ個性を放つ鹿島槍ヶ岳に登った。爺ヶ岳から鹿島槍へと続く稜線からは剱岳と立山が余すところなく望めた。鹿島槍の山頂からは、北アルプス北部と信州の名山の展望も十二分に得られた。

山行前後の観光も満喫し、久々に充実した泊まり山行となった。

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8月13日(木)天候:曇のち雨

前日、伊賀から高速を飛ばしてきた。大町と白馬の間に広がる青木湖の畔でキャンプする。下り坂の天気で、当初の予定を1日ずらして、ゆっくりとする。昼になって安曇野まで足を伸ばして、田淵行男記念館や山岳博物館に行く。昼食はもちろん蕎麦。

再び青木湖に車を走らせる頃には、後立山連峰には分厚い雲がかかってきた。青木湖に戻ったときには本降りになった。鈍りに鈍った身体がますます重くなる。Mackeyが以前、カヌーをやっていた頃の友達に囲まれて、いっそのことこのまま山登りをやめようか・・・、なんて考えてしまう。

青木湖畔にて

山岳博物館からの展望


8月14日(金)天候:曇のち晴

気持ちを切り換えて、まだ薄暗い時間に起き出して、撤収する。雨がまだ残っている。扇沢へ向けて車を走らせる。標高が高くなるにつれてガスが濃密になってくるが、雲を突き抜けたかのように明るくなってきた。ふと視線を上げれば、うっすらと青空に浮かぶ稜線が見て取れた。

標高1350mの柏原新道を登り始める。沢音が心地よく、曇り空の下で暑さを感じることなく登っていく。ケルンを過ぎれば青空が降りてきた。やがて、雲海が眼下に広がる中、雪渓とカールを抱えた針ノ木岳が凛々しく聳えていた。地図では等高線が密に並ぶ柏原新道も特別きつくない登りが続いて、11時頃に種池山荘へ。ハクサンフウロが数多く咲いていたが、期待していたコバイケイソウは外れであった。見えていたのは去年花が咲いた株ばかり。

予定通り、冷池山荘へと向かう。3つのピークを持つ爺ヶ岳を越えていく。南峰に向けて登り始めれば、剱岳から立山までの峰の連なりが姿を見せる。南峰は巻いて中央峰を目指せば、久々のコマクサとの対面を果たせた。少し過ぎつつあるものの、砂礫地に咲く姿に健気さと気高さを感じた。

爺ヶ岳の中央峰で展望を愉しむ。眼下に見えるはずの大町の市街は、敷き詰められた雲海の下。昼間でこんな光景は珍しい。青木湖は曇り空の下なのだろうか?

爺ヶ岳の中央峰を過ぎればすぐに冷池山荘に着くかと思いきや、意外とアップダウンがあって時間がかかった。それでも徐々に雲が払われて姿を見せた双耳峰の鹿島槍は、深く刻まれた山襞がほれぼれするほどであった。

赤岩尾根の分岐するあたりは、絶壁の縁を行く。フォッサマグナと雪庇に刻まれた後立山連峰の東側は切り立った崖が続いている。もし、今、大地震が起こったら足元から崩れて谷底へ落ちるのだろう。そんなことを考えながら登り返せば、ようやく冷池山荘に着いた。

冷池山荘は思ったほどの混雑ではなく、お盆休みは涸沢や立山方面に人が集中するのだろう、と勝手に納得していた。

雲の取れ際に一瞬の虹が・・・

マルバノイチヤクソウ

雪渓とカールを抱く針ノ木岳

背後に剱岳から立山が除く

槍ヶ岳も姿を見せた

爺ヶ岳に咲くコマクサ

いつでも剱岳が見えている

鹿島槍も姿を見せてきた

コバノコゴメグサ


8月15日(土)天候:晴のち時々曇

山の上で迎える朝は気持ちいい。久しぶりだな、この感覚。東の方角を見渡せば、雲海に浮かぶのは頸城三山と高妻・乙妻の連峰だ。雲海の高度は比較的高いせいか、遠くにポツンと島のように浮かび噴煙を上げる浅間山が印象的だった。富士山は見えず。

肝腎のご来光の時間になって朝食に呼ばれる。体力が落ちているので、今回は小屋泊の2食付きだ。食事が終わる頃には太陽がかなり昇ってしまって、鹿島槍の岩壁は辛うじて紅く染まる程度であった。

冷池山荘を出発すれば、ひと登りして平坦な道に出る。これまでとは違ってお花畑が展開し、チングルマやクルマユリ、ハクサンフウロが咲き乱れていた。朝露に濡れて瑞々しさ一杯だ。素直な登りに差し掛かり、布引山へ。ここからは槍穂高連峰が姿を見せて、富士山も山頂部だけうっすらと姿を見せていた。

布引山を過ぎれば再び平坦な道に出る。トウヤクリンドウはあちこちに咲き始め、久々のご対面となるタカネマツムシソウやイブキジャコウソウ、ミヤマシシウドやトリカブトなどが咲いていた。

再び急登が始まり、鹿島槍南峰が近づいてくる。最後の急登に息も切れ切れで、ようやく山頂へ着いた。

雲海に浮かぶ浅間山

頸城三山方面が明るくなる

染まる鹿島槍と波状雲

朝露のチングルマ

仰ぎ見るクルマユリ

蓮華岳と針ノ木岳

雲高く、行く手に迫る布引山

剱岳とトウヤクリンドウ

鹿島槍南峰へと登りにかかる

タカネマツムシソウ

イブキジャコウソウ

槍穂高連峰も姿を見せる

鹿島槍南峰の山頂からの展望は、文句のつけようのないものだった。今日は種池山荘まで行くので、標高の低い北峰はパスすることにしよう。その代わりに、大展望を心行くまで味わうことにする。

空高く、秋の雲が広がる中、剱岳から立山、そして薬師岳までの峰の連なりが見事である。また、北に目を転ずれば八峰キレットの険路とその先にどっしりと根を張る五竜岳が控え、奥に唐松岳、白馬岳と続いているのがわかる。少し背の低い頸城三山もまた存在感を示していた。

長居もしていられないので、名残惜しくも鹿島槍南峰を後にする。写真も撮るだけ撮ったつもりだが、今度は足元の花に目が行く。冷池山荘までは花の多い道である。その中でも、初めてタカネバラを目にすることができたのは特に嬉しかった。また、トウヤクリンドウは陽射しを浴びて花を開き始めていた。

冷池山荘に戻って食事を摂った後、種池山荘へ向けて歩き始める。徐々に夏雲が湧きあがって来て、いつしか青空が隠れてしまった。こうなれば展望もないので、写真も撮らずに淡々と歩くしかない。ただ、そのお陰で雷鳥に出会うことができたし、至近距離でホシガラスを見ることもできた。

雲が厚くなってきて、雷が来たらいやだな、と思っていたが種池山荘には雨にも降られることなく着いた。もう少し頑張れば、扇沢まで下れるが、ここまで来れば敢えて急ぐことはない。種池山荘もそれほどの混雑はなく、快適に休むことができた。

鹿島槍山頂から剱・立山・薬師

やっぱり展望の主役は剱岳

鹿島槍山頂から後立山連峰北部

五竜岳と八峰キレット

チシマギキョウ

シシウド咲く稜線

剱・立山の高みと峡谷の暗示
(壁紙写真はこちら

キバナノカワラマツバ

タカネバラ

開き始めたトウヤクリンドウ

思い残して、盛夏から晩夏へ

ホシガラス


8月16日(日)天候:晴

今日は扇沢へと下るだけで、朝もゆっくりと支度する。それでも6時過ぎると準備も出来てしまって、ボチボチ下ろうかとなる。山荘前からは針ノ木岳と蓮華岳が見える。剱岳は昨日サヨナラしている。

歩きやすい下山路を淡々と下る。沢音が聞こえて、行く手に扇沢の駐車場が見えてくる。日陰の涼しい道が続き、順調に下る。同じペースで歩く夫婦と抜きつ抜かれつする。やがて亜高山帯を過ぎて広葉樹が主体の林に変われば、陽射しが出てきて暑さを感じた。大きくなる沢音に励まされて9時頃に下山した。

ここからは、時間も早いので私が行ったことのない黒部ダムへ行くことにする。観光モードに切り換える。トロリーバスに乗って黒部ダムへ。ダムサイトから黒部湖越しに望んだ赤牛岳が立派であった。

こんな山の中に、これだけのものをよく造ったなぁ、というのは誰もが抱く感想であるが、地震で崩れないのか、砂で埋まるのはいつになるのか、などと余計な感想も持ってしまう。しかし、一見の価値があることは実感できた。このダムのお陰で、一大観光エリアが誕生したのだから。

扇沢へ戻って、今度は葛温泉へ向かう。高瀬川が刻む谷間の秘湯で、いい雰囲気だ。その後、青木湖に戻って、Mackeyのカヌー仲間に挨拶する。途中の山麓の田園地帯からは、青空に映える鹿島槍の双耳峰を見ることができた。

下山の朝、蓮華岳と針ノ木岳

黒部湖の奥に赤牛岳を望む

放水する黒部ダム

虹かかる水煙

虹の上に聳える立山

下山後の山麓から爺ヶ岳と鹿島槍


概ね天候に恵まれて、素晴らしい山行を満喫できた。後立山連峰は、北アルプスの中では比較的馴染みの薄い山域であったが、山頂からの展望は他のエリアとはまた変わった素晴らしいものであった。

中でも剱岳は、種池山荘から爺ヶ岳方面に少し進んだところで初めて姿を見せて以来、終始展望のお伴になっていた。剱岳の主峰から剱沢雪渓等を派生させ、小窓、大窓とつづく岩尾根にはホレボレさせられた。一方、柏原新道からの展望の主役は、雪渓を目立たせた針ノ木岳であった。一昨年の五色ヶ原までのルートからもひときわ存在感を持っていたが、かなり気になる存在である。来年は、コマクサ咲く蓮華岳と合わせて、是非登ってみたいものだ。

花も、一昨年の立山・五色ヶ原方面ほどではなかったが、まずまず咲いていた。個人的にはタカネバラを初めて認めることができたのが嬉しかった。一つ残念だったのは、コバイケイソウが当たり年でなかったこと。白山や中央アルプスを含む中部山岳は、4年に1度の当たり年が今年になると踏んでいたのに、種池山荘付近のお花畑にはチラホラと咲く程度であった。しかし、北アルプスの他の山域では当たり年との報告もあり、単純に4年周期では片付けられないのかもしれない。

体力面では、元々それほどハードなルートではなく小屋泊まりであったため、大きな疲れには至らなかったが、テン泊山行がこのまま遠のくような気がする。下りの踏ん張りの利かなさが大いに気になるところである。

2009.08.29. by TAKASKE

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