大峰山脈・行者還岳(1,546m)、2009年6月6日、天候:曇ときどき晴
コース:行者還トンネル東口−一ノ垰−行者還小屋−行者還岳(往復)
コバイケイソウとブナの緑色に染まる奥駈の稜線を行く |
初夏の大峰・奥駈道を歩き、行者還岳に登った。ブナの美林とシロヤシオやサラサドウダンの咲く稜線は快適だった。
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4年前の春、ゴールデンウィークの時期に大峰の大普賢岳から弥山を経由して天川川合まで歩いた。大普賢岳の険路と、弥山への身体に応える登りが印象的だったが、行者還岳付近の芽吹き前のブナ林にも強く惹かれた記憶がある。このブナ林との再会に加えて、今年は一度も見ていないシロヤシオを愛でるために、日帰りで訪れることにした。
去年、八経ヶ岳に登ったときに使った行者還トンネル西口は、百名山ハンターのメインルート。今回は反対側のトンネル東口に車を停める。こちらにも10台程度の駐車スペースがあるのは意外と知られていない。国道309号をうねうねと登れば雲がかかる中、トンネル東口に着く。先着は2台だけで、既に10時だというのに拍子抜けだった。
登り始めるとすぐにブナとヒメシャラの美林が展開する。陽射しはないが緑が美しい。ヒメシャラの幹を伝って水が流れていた。雨はたった今上がったばかりである。トラバース道から尾根道に変われば、今度は立派なミズナラを見上げる。急ながらもいいリズムで尾根道を登り続けるうちに、雲の切れ間から薄日も射してきた。樹間越しには緑に染まる山肌が見て取れた。登り始めて1時間ほどで、奥駈道の一ノ垰に出た。
登り始めてすぐに美林が展開する |
水の流れるヒメシャラの幹 |
尾根道を行くようになる |
ミズナラの大木を見上げる |
木の間越しに緑の尾根 |
一ノ垰からは奥駈道を北に向かう。シロヤシオがあちこちに咲いていて、風に純白の花びらが舞い散っている。そして、背の高い木はブナで占められるようになる。アップダウンの少ない稜線を行けば、同じような景色が展開するが、ブナの木を眺めるのは全く飽きない。堂々たる姿の高木に、何度も何度もカメラを向ける。
陽は射したり翳ったりで、輝く樹林とシットリとした樹林が交互に展開する。どちらもいい雰囲気だが、前回の芦生の森に味を占めて、霧に煙る樹林もいいなと思ったりする。大普賢岳の特徴のあるピークが見える。4年前にあそこを歩いたことが思い出された。
石灰岩地帯に差し掛かれば、クサタチバナの群落が現れた。花は咲き始めだったが、純白の花がインパクトがあった。やがて石灰岩地帯を抜けてクサタチバナも消えたら、今度は足元一杯にバイケイソウが展開した。バイケイソウとブナ、これもまた見事な組合せだった。
奥駈道のブナの大木 |
青々としたブナの葉 |
行く手に大普賢岳が聳える |
至る所、ブナ林が展開する |
クサタチバナは咲き始め |
クサタチバナの群落を通り過ぎる |
マムシグサが群生している場所を過ぎると、シロヤシオが再び現れて行者還小屋に着いた。行く手に覆いかぶさるような行者還岳な姿を認める。役行者が引き返したという険路、どうやって登るのか、と思ったら、まずはピークを避けるように右へ巻く。やがて目の前に梯子が現れた。4連続の梯子を登りながら、上の方に光り輝く樹林が見えて、あそこまで行けば楽になると思う。
梯子を過ぎたら九十九折の道を登りホオノキが輝くところを通過したら、再びなだらかな道になって左斜め後ろに進路を変える。シロヤシオの回廊のような中を行けば、樅の木とシャクナゲの生い茂る行者還岳山頂に着いた。八経ヶ岳へと通じる奥駈の縦走路は、初夏の陽射しを受けて輝いていた。
マムシグサの多い場所 |
行者還岳へ向けて登る |
ホオノキが光を浴びて輝く |
サルノコシカケ |
行者還岳のシロヤシオ |
地面に散ったシロヤシオ |
行者還岳山頂に着く |
山頂から八経ヶ岳方面 |
思ったよりも時間が経っていた。帰り道を急ぐことにする。
しかし、陽射しが戻れば、来たときと違った風景が展開する。行者還小屋へと下る4連続の梯子は、奈落の底へと落ちていく感覚だ。行者還小屋からは緩いアップダウンが繰り返される道が続いた。
バイケイソウが敷き詰められる道にブナの大木が林立している。ブナの幹にはツタウルシ?が絡みつき、賑やかな様相だ。その傍らでサルノコシカケに侵食され、絶命寸前のブナも立っている。谷を隔てて聳える弥山が雲を被り始めた。風が強くなってきて、湿気を感じる。雷雨が近づいているのだろうか。
それでも雲は時々切れて樹林が輝く。ブナ林の中で、サラサドウダンの鮮やかな紅色と、シロヤシオの清楚な白色が目を引いた。シロヤシオは風に吹かれて次々と花びらを落としている。それでも、無数の花を咲かせて最後の輝きを放っていた。
ブナとシロヤシオの奥駈道に別れを告げて、トンネル東口へ向けて下り始める。登ってきたときよりも急に感じるのは、疲れが出てきている証拠か。それでも支稜線を下り続けて、左へ折れると美林のトラバース道。登山口はすぐそこだった。見事な花を咲かせているトチノキが出迎えてくれた。
展望地から大台ヶ原方面 |
バイケイソウとブナの大木 |
サラサドウダンの見事な古木 |
所々で鮮やかな姿を見る |
シロヤシオも多い |
曇り空では今ひとつ目立たない |
陽射しに輝くブナ林 |
何度もブナを仰ぎ見る |
登山口にて |
登山口付近の見事なトチノキ |
見事なブナの美林を歩いた奥駈の道であった。奥駈のルート途中にあり、ピークを目指す山行ではなかったが、深さを実感した。サラサドウダンとシロヤシオに彩られた今が、最も華やかな時期なのだろうと思った。初めての対面を期待していたヤマシャクヤクは、過ぎてしまっており、これだけは残念だった。
それにしても、立派な樹林の中の縦走路だ。多くの人は、最高峰の八経ヶ岳に登るためだけにトンネル西口からの往復で終わらせるが、ブナ林の見事さだけを見れば行者還岳のルートの方が素晴らしい。シロヤシオやサラサドウダンなど、見事な紅葉を見せる樹木も多そうで、10月中旬頃の見頃の時期にも訪れてみたいと思った。
しかし、歩行時間と疲れは想像以上であった。往復で5時間程度と見ていたが、7時間もかかってしまったのは誤算。写真を撮りまくっていたのが原因だが、秋の山行では許されない。
2009.06.13. by TAKASKE
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