奥飛騨・籾糠山(1,744m)、2007年10月21日、天候:晴れ

コース:天生峠−天生湿原−(カラ谷コース)−籾糠山頂−(ブナ探勝コース)−天生湿原−天生峠

紅葉の山肌を見下ろす籾糠山頂

(遠く北アルプスが連なる)

見事なブナの森を抱く籾糠山に、黄葉を鑑賞しに行った。晴天の中、見事な黄葉を満喫した、快心の山行になった。

※写真はすべてクリックすると別窓で拡大表示されます。


前日、東海北陸道を北へ向かう。荘川ICで下りるのは、前回の山行と同じ。お昼に蕎麦を食べて、御母衣ダムを抜けて、白川郷。今回はここも素通りし、富山県へ。行き着いた先は、素朴な合掌造りの五箇山。折りしも、「初しぐれ」の雨が降り続いていた。結構な降りだ。またしても合掌造りの民宿に泊まる。「こきりこ節」が富山の民謡であることは知っていたが、五箇山とは知らなかった。民宿の部屋に「こきりこ」の楽器が置かれて、シャンシャンといい音を立てる。そして、季節感あふれる料理に舌鼓を打つ。

翌朝、ものすごい寒さである。山は雪が降ったのかもしれない。外へ出れば、雲がみるみる取り払われていく。山の斜面が日の光に照らされて、紅葉の様相。その中、狭い集落の人々が集まっている。そして午前8時過ぎ、登場したのは花嫁さん。民宿のすぐ近所の家を出て、隣の集落に住む婚約者の家へ行く。五箇山でもこのような伝統的なスタイルの嫁入りは、20年ぶりのことだという。これはいいものを見させて頂いた。

五箇山で迎えた朝

珍しい嫁入りのシーン

冷え込みが残る中を出発し、白川郷まで戻って国道360号。大して車が通っていないな、と思いながら、ズンズンと登っていく。ちらっと雪をかぶった白山の姿が目に飛び込んだ。雪のラインが結構低い。登り着いた天生峠。駐車場は満車状態で、偶然にも1台の車が出て行くところに滑り込んだ。

車を出ると既にあたりは見事な紅黄葉である。これは期待が持てる。雲はどんどん取り払われて、すっかり晴れ渡った。登りはじめると、すぐにブナが現われる。そして、少し登れば、早くもブナ林となる。逆光に輝く葉で森が染まっていた。すぐに天生湿原に出る。青空に様々な色の紅黄葉。素晴らしい。まだ序盤にもかかわらず、シャッターを押す手が止まらない。

早くも現われたブナ林

天生湿原も見事に染まっていた

湿原の横にも輝くブナ林

湿原を抜けると再びブナ林。少し下って沢を渡れば、氾濫源の平坦な空間が広がる。桂の巨木があって、べっこう飴のような香りが漂っていた。この日はカラ谷経由で登ることにするが、ちょっと寄り道。帰りまで待てない。そこに広がるのは、背の高いブナの森。一面に染まっていて、まさに黄金色のステンドグラスのようだった。お目当ては「ブナ太郎」との再会も果たし、お約束の写真も撮った。

背の高いブナの森に分け入る

黄葉するブナの大木

再び出会った”ブナ太郎”

さて、カラ谷分岐まで戻って、カラ谷ルートを登りはじめる。すぐに現われるのは”桂門”。一対のカツラの大木が門のように鎮座していた。通るとき、ここでも甘い香りが漂っていた。

谷沿いのルートは光と影が交錯する。見上げる対岸の山肌は、陽射しに燃えるような紅黄葉である。ブナばかりでなく、カエデなどの木々も多く、錦絵のような見事な配色である。なおも登り続けると、白いものが現われた。雪だ。やはり降っていたのだ。既に気温が上がり始めて、あちこちから雫が落ちてくる。足元はぬかるみ状態となってきた。

カラ谷コース入口の”桂門”

陽射しの当たる斜面

錦絵のような山肌

登り続ければ木平分岐に出る。団体さんが休んでいて賑やかだ。籾糠山の山頂を目指してなおも登り続ける。針葉樹が混じる樹林帯になると、雪解けの雫が大粒の雨のように降り続くようになる。足元にも少しずつ雪が増えてきた。

籾糠山頂への登りが続けば、所々樹林帯が切れてくる。期待に胸を膨らませて最後の急登。あちこちで休む人、昼食をとる人が現われる。なんとも盛況だ。

登り着いた山頂は、ごった返していた。狭い山頂はまるで芋を洗うようだ。眼下に広がるブナ林がオレンジ色に燃えている。全山見事に染まっていた。そして、今日は期待通りの展望が飛び込んでくる。木曽御嶽は優美な裾野を広げていた。その左側に乗鞍岳。更に左奥に、槍穂高連峰が白く光っていた。穂高連峰は手前の雲に隠れていたが。考えてみれば、今いるところは北アルプスから見て西側に位置している。それを実感した眺望であった。

山頂からの黄葉したブナ林

木曽御嶽

雪化粧した槍ヶ岳

狭い。腹が減ったが、こんな山頂では落ち着けない。そんなわけで、ひとしきり写真を撮って、山頂を後にする。少し下ったところにあるベンチで昼食をとることにした。最早、満員御礼状態で、食べている目の前を行列のようにハイカーが次から次へと通り過ぎて行った。隣に座っているご年配の夫婦と話しこんでしまった。

下山を始める。今度はブナ林探勝コースを行く。多くの人達が木平湿原ルートを下山しているせいか、静寂の世界となった。ここでも紅黄葉が見事だ。低木のムシカリが目立つ。しばらくは平坦に近い緩い下りが続き、そこから少し急な下りへ。陽射しが傾いて、斜面の陰になる。あたりは一面のブナ林だが、陽射しが届かないのが残念だ。

やがて、樹間から雪を被った北アルプスが見えてきた。右に見えるのが薬師岳、左に立山、左奥が剱岳だ。眼下に見えるのは天生湿原を取り囲むブナ林だろう。再び傾斜が緩くなり、光が差し込んできた。鬱蒼としたブナの森が再び黄金色に輝きだす。降り注ぐ光に包まれ、平坦になった道を歩けば、「ブナ太郎」と再会した。天生湿原は目と鼻の先だ。

ムシカリの紅葉

立山連峰(右は薬師、左奥に剱)

ブナの斜面に光が降り注ぐ

沢を越えて少し登り返せば、天生湿原に出る。湿原手前のブナ林がまたいい雰囲気だ。青空をバックにした姿、そして逆光線に燃えるように染まる姿、紅葉したツル植物を纏った姿・・・どれもこれも素晴らしい。

仰ぎ見るブナ林(Mackey撮影)

燃えるようなブナ林

着飾る幹(Mackey撮影)

湿原を抜けて天生峠の駐車場へと下りていく。視界が開けると今度は、スッキリと雲が取り払われた、槍穂高連峰が顔を出した。雪をかぶった穂高連峰の滝谷側の山襞が印象的だった。そして駐車場まであとわずかの場所にも、黄金色の葉を纏った立派なブナを見ることができた。最後の最後まで素晴らしい山行を楽しむことができた。

カエデが彩を添える(Mackey撮影)

槍穂高連峰が姿を見せた

黄金色に輝くブナ


7月に登ってブナ林の美しさに魅せられて、黄葉の時期に再訪することを思い立った。当初は悪天候が予想された週末、まさかここまで晴れ渡るとは想像だにしなかった。最初から最後まで、すべてが印象深い山行になった。

ブナ林の黄葉は、期待通り、いや期待以上であった。これまででおそらく1,2を争うほどであった。出来上がってみると、ありふれた写真ばかりでもう少し工夫して撮ればよかった、と思うのはいつものことだ。

この日の山行によって、紅(黄)葉を見るにはやはり晴天がベストであることを実感した。

2007.11.16. by TAKASKE

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