大山(1709m)、2007年5月4日、天候:晴ときどき曇り
コース:夏道登山口−(夏道コース)−六合目避難小屋−弥山山頂−石室−六合目避難小屋−元谷小屋−大神山神社−大山寺
新緑のブナ林を前景に大山北壁を望む
(元谷小屋付近にて) |
GWの後半は鳥取県の大山に遠征。山腹に展開するブナ林、特にメインルートから元谷までのブナ林の雰囲気が素晴らしかった。大山が、西日本の山の中で特別な存在であることも、登ってみてよくわかった。
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電車では不便だからと、車で大阪を出る。実は2週間後に引っ越しを控えていたが、大山だけはどうしても登っておきたかったので、中国道経由で行くことにした。しかし、大阪府内で3時間近くもかかってしまった。GWしか遠出はできないが、それにしても何とかならないものか・・・
中国道から米子道へ入り、蒜山ICで下りる。時間がやや遅くなってきたので蒜山高原は素通りして、大山へと向かう。雄大な風景が展開する。関西では味わえない風景だ。大山の特徴ある山体が近づいてくる。鍵掛峠から望む南壁は見事であった。
鍵掛峠からはブナ林に覆われた山腹を走る。芽吹きを迎えたばかりの淡い緑のシャワーの中を走るのは気持ちよい。車を停めて写真を撮る。静けさと澄んだ空気に野鳥のさえずり、と明日の山行の素晴らしさを予感させるようであった。
鍵掛峠から望む大山南壁 |
一ノ沢付近のブナ林 |
芽吹きから日の浅いブナの葉 |
西側からは均整のとれた姿が
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夏道コースをスタートする。足元をイワボタンやイチリンソウ、タチツボスミレが彩り、やがてヤマブキが道の両脇を染める。コースアウトして阿弥陀堂を拝んで、夏道に戻る。階段状の登りが続き、ブナ林が現われた。
朝日が新緑を透して降り注ぎ、鳥のさえずりが響き渡る。最初はそれほど太くはないがスラリとした木が林立する空間が続き、やがて太い見事なブナも混じってくる。山頂の方は雲を被っているため、時々陽射しが遮られるが、陽が射し込んだときに森全体がフワッとライトグリーンの光に包まれる。この感覚が素敵だ。何度写真を撮っても飽きることはない。この雰囲気全体を撮りたくて・・・
イワボタン |
イチリンソウ |
ヤマブキは登り始めで花盛り |
阿弥陀堂 |
朝日に輝く新緑のブナ林 |
立派なブナも多い |
何度撮っても飽きない |
5合目あたりは登りがきつくなってくる。それとともに今まではライトグリーンのシャワーを演出していたブナは、標高を上げて新芽を収めた状態となってくる。やがて、圧倒的な幹の高さを誇っていたブナも徐々に低くなってきた。元谷への道を分けると樹林帯を抜けた。
六合目避難小屋で一休みする。見上げる北壁はガスの中。やはり下り坂の天気予報は嘘をつかないのか。ここからはひたすら登る。ガスに包まれた山頂部とは正反対に、見下ろす山裾は緑色に輝いていた。リズムをつけるように、グイグイと高度を上げていく。山頂の雲がとれてきて展望が利くようになる。8合目からは木道が現われる。ダイセンキャラボクの斜面の中、まっすぐに続く木道を登っていくと、弥山の山頂に着いた。
弥山の山頂からは最高峰の剣ヶ峰へと続く稜線が見渡せた。一見、歩いて行けそうだが、通行禁止とされている。誘いこまれるような稜線の形。一つ向こうのピークには大勢の登山者が立っていた。そこから先へと歩いている人も認められた。
六合目避難小屋付近 |
木道を歩いて弥山へ |
弥山から最高峰の剣ヶ峰を望む |
山頂を後にして下山にかかる。今度は石室経由でダイセンキャラボクの純林を横に見ながら下った。登りの道と合流したら、6合目避難小屋へ向けて一気に下った。山頂を覆っていた雲はすっかり払われている。北壁の見事な姿と、これから下りていく元谷方面がよく見渡せた。
大山キャラボクの斜面と青空 |
大山北壁を見ながら下山 |
斜面から元谷を俯瞰 |
続々と登ってくる登山者をやり過ごしながら、6合目避難小屋を過ぎる。眼下にブナ林が近づいてきて、期待が高まる。しかし、この頃から再び雲が空を覆い始めて、陽射しは翳りがちになってきた。
分岐を右折して、元谷方面へ向けて下る。所々にタムシバやムシカリが咲く中、木の階段を下っていく。周囲はブナ林となり、静けさに包まれた。陽射しが完全に途絶えてしまったのは残念だが、異空間に迷い込んだような感覚だ。
奥に北壁を配すように展開するブナ林がいい。このあたりはまだ芽吹きが始まったばかりで、芽吹く直前の淡く紅色に染まる枝先も見られた。全体がほんのり紅く染まっている。太いブナの木も多く、鳥のさえずりが響き渡る。こうなったらも足が止まってしまう。後から後から追い越されて、納得するまで露出を変えながら写真を撮り続けた。(その割に出来は良いとは言えないが・・・)
眼下のブナ林へ向けて下り始め |
樹間に北壁を望むブナ林 |
淡紅色の芽吹き |
異空間の雰囲気を行く |
鬱蒼としたブナ林の斜面を下り切る。異空間のブナの森が途切れたところに、元谷避難小屋があった。見上げる大山の北壁が圧倒的だ。時折、崩壊の音がこだましていた。8合目から山頂までの開放的な雰囲気とは全く別の、畏怖の念を抱かせるような張り詰めた雰囲気を放つ北壁の姿であった。
岩屑で埋まった元谷を渡り、反対側の斜面を大山寺へと歩いていく。濃密なブナの森はなくなったが、淡い新緑のブナ林が続き、足元にはスミレやミヤマカタバミ、エンレイソウなどの春の花々が咲き乱れていた。低木のムシカリもそこかしこに純白の花をつけていた。やがて杉の大木が現われると、大神山神社の境内に出た。少し下れば今度は大山寺。既に生活の雰囲気あふれる空間が広がっていた。登山者よりもはるかに多い観光客でごった返す中、駐車場へと下っていった。
ミヤマカタバミ |
エンレイソウ |
淡い緑に染まるブナの新緑 |
ミヤマキケマン |
大神山神社 |
大山寺 |
早々に駐車場を後にする。日本海へと向かうと、すぐに雑踏は途切れ、徐々に高度を下げて行った。少し前まで、あの鬱蒼とした森を歩いていたことがウソのように、やがて車は海沿いを走るようになった。遥か後方に、大山が独立峰としての姿を見せていた。
大山が鳥取県民から愛されている山であることを、登山者の多さから実感した。以前にNHKか何かの人気投票で、富士山、槍ヶ岳に次いで全国で第3位になったことも理解できた。
これほどまでに多彩な魅力を持つ単独峰は数少ないだろう。火山高原としての特徴を最も強く見せる牧歌的な西斜面、開放感あふれる6合目から山頂までの登路、その下部に展開する鬱蒼たるブナ林、中でも夏道から元谷へと下る斜面は噂通りの素晴らしいものであった。そして、何よりもあの北壁を見上げる元谷避難小屋付近の雰囲気が素晴らしい。大山を登ったら、この場所には是非とも立って欲しい、と思わせるものがあった。
この魅力的なブナ林は、できれば紅葉の時期にも訪れたいものだ。北壁をバックにした紅葉のブナ林も魅力的だろう。そして、大山の中でも特に素晴らしいとされる、鳥越峠のブナ林も歩いてみたい。
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