若狭駒ヶ岳(780m)、2006年11月4日、天候:晴れ

足谷口バス停−池原山−744mピーク(県境尾根)−池−木地山分岐−駒ヶ越−駒ヶ岳−木地山分岐−東谷−木地山バス停

紅葉したブナの大木(県境尾根)

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滋賀県と福井県の県境にある若狭駒ヶ岳(近江駒ヶ岳)に登った。晴天の中、ブナの黄葉に染まった県境尾根が素晴らしく、印象的な山行となった。
山行を通じて出会ったのはわずか1組(約10名の団体さん)、登り下りのルートファインディングが難しかったことなど、普段の山行とはかなり趣を異にした点も、山行をより印象的にした。


以下、すべての写真はクリックすると拡大表示されます)

11月初旬の3連休、京都北山方面を探していた。当初考えていたのは、「八ヶ峰」か「百里ヶ岳」。そして昭文社の地図の解説を読んでいたら、「駒ヶ岳」に2ページが割かれており「北山一の規模」のブナ林とされていた。時期的にも黄葉の時期に合いそうだ。路線バスを使ってのアプローチも、朽木前泊によりうまくつながることから、「駒ヶ岳」こと若狭駒ヶ岳に行き先を決めた。

前泊した朽木の朝、安曇川が作り出した盆地は冷え込みで、張り詰めたような空気であった。やってきた「バス」は、名ばかりのワゴン車で、当然のように誰も乗っていない。運転手に聞くと、「登山客を乗せたのは、3年で4組しかいない」とのこと。山奥にどんどん入って行き、枯れ草の生い茂る谷間を行く。突然バスが停止して、「はい、ここです。ここで下ろすのは初めてだね。」草ぼうぼうの家が一軒もないところに足谷口のバス停があった。

登山口を探してウロウロする。住宅跡の石垣のあたりを歩き回るが、見当たらない。もう一度地図の解説を読み返してようやく1本の標示を見つけた。なんとなく怪しげな登山口である。奥に登山道が続いている雰囲気がない。

一歩目を踏み出す。倒れ掛かった木をどけて登っていくと、すぐに植林帯にぶつかった。ここで踏み跡がわからなくなる。赤テープも見当たらない。植林帯の中に続いているようにも見える。さんざん悩んだ挙句、地図と見比べて、自然林との境界にある尾根筋を行くことにする。「道なき道」と言ってもいいような尾根筋を歩けば傾斜が緩んで、踏み跡らしきものが再び現われ、赤テープが目に入った。

自然林と植林との境界は忠実に尾根筋を辿っている。所々に赤テープも出てきて、このルートを歩くコツはつかんだ。やがて尾根が広くなってきて、植林帯が途切れたところにブナの木が立ち並ぶ小さなピークが現われた。ここが池原山だろう。1本のブナの大木があるが幹が途中から折れて、立ち枯れ間近の様相を呈していた。どうも、地図の解説とは状況が違うようだ。

登山口周辺の光景(足谷口)

登山口はこんな感じ

池原山でブナが現われた

撮影:Mackey

立ち枯れつつある大木

池原山から一旦高度を下げつつ、稜線を忠実に辿る。再び植林帯になった。・・・と、ここで予想もしなかった事態が発生。なんと、林道が現われたのだ!地図に載っていないにもかかわらず随分と立派な林道だ。尾根が林道で削られている。そして、尾根筋を見上げると所々に赤テープが見られた。林道がどこへ行くのかわからなかったので、なるべく尾根筋を忠実に辿る。林道は尾根筋を所々で寸断していた。やがて林道が終わり、元の登山道を行く。相変わらず踏み跡は薄い。やがて平坦な場所に出て、744mピークを示す小さな標示を見る。ここが県境尾根との合流点であった。引き返すときのために、とデジカメで入念に写真を撮った。

県境尾根を、駒ヶ岳山頂へと向かう。踏み跡が薄い中、自然林が増えてきた。ブナの木も現われてきた。突然、明神谷方面を示す指導標とともに明瞭な踏み跡が現われた。

さて、ここからはスッキリとしたブナ林の稜線を行く。落ち葉が積もる稜線に晩秋の陽射しが降り注いで、爽快なことこの上ない。ブナの木も細くスッキリしたものから、太くて枝分かれしているものまで多様で、決して飽きることのない稜線歩きが続いた。道は緩く上下しながら続き、黄葉を透して降り注ぐ光の中で、この空間を独り占めしながら歩いた。やがて、眼下に池が現われた。自然の姿そのままに、異空間に迷い込んだような雰囲気をかもし出していた。ここで昼食をとった。

枝分かれしたブナの大木

撮影:Mackey

ブナ林を仰ぐ

ウリハダカエデの紅葉

撮影:Mackey

雰囲気のいい池に出た

時折、陽が翳るようになる。午後には雷の予報も出ているので、天気が気になってきた。池のほとりでゆっくり休んでいるわけにはいかない。駒ヶ岳の山頂を目指して歩き始める。

藪のない、すっきりとした尾根道が続く。落ち葉が敷き詰められた赤茶けた絨毯のような登山道に、頭上は黄色から橙色のブナの葉がステンドグラスのように輝いていた。京都北山エリアでこれだけのブナの純林が見られるとは想像もしていなかったことだ。県境尾根はどこまでも黄葉ブナ林が続いていた。

真新しい指導標が目に入った。「ろくろ橋」と書かれている下山路があることを知る。地図には記載されていない道だが、最近整備されただけに信頼がおけるだろうと、下りはここからにすることを決める。山頂までは1.3kmとある。なおもブナの尾根道が続き、駒ヶ越から一気に登ると山頂手前の偽ピークだ。

それにしても、出会ったのは池を出発してまもなく反対側からやってきた10人ほどの団体さんだけだ。福井県側から入山した人達だ。やはりどちらかと言えば福井県の人達に登られている山のようだ。こうして山頂に向けて緩やかに登る道も、自分たちで独り占めだ。緩く登った先に標高780mの駒ヶ岳の山頂があった。山頂からは歩いてきた尾根道が黄葉(紅葉)に輝いているのが見て取れた。見たことのない山並みの景色で、山座同定もままならないが、来てよかったと心から思える時間だった。(実は、登り始めの状況から、途中で撤退することも考えていたので)

撮影:Mackey

スラリとしたブナが立ち
並ぶ登り坂

絨毯のような尾根道が続く

根元が曲がったブナも多い
(このあたりは広い尾根道)

駒ヶ越付近の太いブナ
(青空と山肌を背景に)

撮影:Mackey

落ち葉に描かれる樹形

山頂へ向けてブナ林が続く

山頂からの展望

雲が増えてきたものの心配していた雷雨の気配はない。いつまでもゆっくりしていられないから、とそろそろ下ることにする。来た道をろくろ橋分岐まで戻る。今度は逆光に輝くブナの黄葉を見ながら下る。同じルートでも行きと帰りでは別の景色を目にすることができ、まさに「2度おいしい」ルートである。

「ろくろ橋」を示す真新しい指導標のある小ピークまで戻って一休み。ここからは地図に掲載されていない木地山へと下るルートをとる。ここでも黄葉に輝くブナ林が続いた。雲が増えてきたせいか陽射しは頻繁に翳るが、陽が射してきたときにパッと輝き、清々しさ一杯である。

最初は緩やかな下りだったが、やがて、急な下り坂が現われる。踏み跡も目立たない中、赤テープを頼りに、木につかまりながらの急降下である。所々、脚がつりそうになるほどに踏ん張って下り続ける。手を離せばそのまま谷底に落ちていきそうなルートを、赤テープを頼りに下り続けると、沢に降り立った。地図に掲載されていないルートなので、どこを歩いているのか正確にわからない。余り踏まれていない谷筋を何度も渡り返していくうちに、踏み跡も徐々に明瞭になってきた。

沢沿いは緩やかな下りが続いた。標高を大きく下げてきたせいか、樹林帯はまだ緑色の葉を纏っていた。真新しい指導標もあちこちに立っていて、ここまで来れば迷いようのないコースである。やがて、西谷の流れが合流し、現在歩いている場所がようやくわかった。そして、木地山のゴールはすぐそこにあった。そして、植林帯が途切れて、集落が目に飛び込んできた。

ひっそりとした集落でバスを待っていると、犬に吠えられた。なかなか吠えるのをやめてくれず、谷間に響き渡る。飼い主がなだめてようやく吠えるのをやめた。1日たった3本のバスの最終便がやってきた。行きと同じワゴン車だ。もちろん、他には誰も乗っていない。山行の中でも結局、会ったのは県境尾根の10名ほどの団体さんだけであった。

駒ヶ越付近の下山路

撮影:Mackey

不思議な形をした枝

ろくろ橋への分岐直後
(見事な染まり具合だ)

沢沿いはまだ緑色

***

氷ノ山、台高・明神岳に続く「秋のブナ山行・第3弾」は、黄葉のブナ林に彩られた県境尾根が印象的で、大変素晴らしいものとなった。また、アプローチや登り下りのルートや出会った人の少なさなど、標高780mの低山としてはこれまでにないような強い印象が残った。

また、昭文社の地図に記載されたように「北山一の規模」とあるのは決して偽りではないことが見て取れた。台高の明神岳にも決して劣らない、関西としては立派なブナ山であることがわかった。もう一つ、この若狭駒ヶ岳が全国で最も西にある駒ヶ岳だそうだ。そのことを知って、もっとこの山を関西に住む者として胸を張って紹介したいと思った。

ただ、登山地図や解説に書かれた内容には疑問が残った。書かれている内容が最新の状況を反映していないようである。(手元にあったのは2005年度版の京都北山)

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