北アルプス・双六岳
槍穂連峰の雄大な眺め,黒部源流山域の神秘さ。2年前に北穂から見た双六,黒部五郎方面の懐深い眺めは,2つのテーマに収斂してようやく実現の運びとなったのです。
@期間 8/1317(山中4泊5日)
A同行者 T君
Bアプローチ JR高山本線・高山駅よりバスで新穂高温泉へ
Cルート 第1日:新穂高温泉−わさび平小屋−秩父沢−鏡平山荘(泊)
第2日:鏡平山荘−双六小屋(泊)
第3日:双六小屋−双六岳−三俣蓮華岳−三俣山荘(泊)
第4日:三俣山荘−三俣蓮華岳−(巻き道)−双六小屋−鏡平山荘(泊)
第5日:鏡平山荘−秩父沢−わさび平小屋−新穂高温泉
(最高点:双六岳山頂・標高2860m,難易度:☆☆☆★★)
D天候 第1日:晴のち雨
第2日:雨と霧
第3日:曇と霧ときどき雨
第4日:雨と霧(夕刻に一時晴れ間)
第5日:雨と霧のち曇(下山後晴れ間)
E所要時間 第1日:歩行時間約4時間,休憩時間約2時間
第2日:歩行時間約2時間,休憩時間約15分
第3日:歩行時間約3時間15分,休憩時間約45分
第4日:歩行時間約4時間半,休憩時間約30分(双六小屋で3時間の大休止)
第5日:歩行時間約3時間45分,休憩時間約45分
Fポイント ・第1日,新穂高温泉から夏の強い陽射しを浴びながら小池新道への入口まで来ると,これから登って行くコースが鮮やかな緑の絨毯と岩の見事なコントラストを描いていました。次の瞬間,稜線から雲が垂れ込めてくるのが見てとれました。

・登り始めるとやがて空は雲に覆われてきました。間もなく大粒の雨が降ってきました。まさか,これが長い雨の始まりになろうとは,当時は思いませんでした。

・シシウドが原への急登の頃は雨は一旦止みましたが,やがて再び降り出しました。遠く雷鳴も聞こえました。

・第2日,曇の鏡平を出発し双六小屋へと向かいます。弓折岳の稜線に出た頃までは雨はほとんど降っていませんでしたが,徐々に雨が強くなり視界もどんどん閉ざされてきました。風も出てきました。花をゆっくりと眺めている余裕もなく,双六小屋へ急ぎました。

・双六小屋まで着いたところで,これ以上の前進は得策でないと判断しました。雨や風の強さ,視界を考えれば無理はできたと思いますが,展望のない双六岳では来た意味がなかったからです。

・雨は強弱を繰り返しながらずっと降り続きました。双六小屋へは続々と”避難民”が押し寄せてきて,超満員となりました。ラジオからは,関東南岸に接近した熱帯低気圧が豪雨をもたらしているニュースが流れ続けていました。

・第3日,朝4時半に起き出しました。遠く,燕岳が見通せました。谷を挟んで鷲羽岳が見事でした。しかし,笠ヶ岳の方向からあっという間に雲が押し寄せてきて,雨が降り出しました。

・9時過ぎに雨は小止みになりました。停滞するのはストレスがたまります。9時10分の気象通報によれば,熱低は日本海に抜けて北上中とのこと。このまま回復の期待が持たれました。濃霧の中を双六岳へ向けて歩き始めました。

・双六岳への急登は,咲き乱れる花々によって力を与えられるようでした。視界はなくとも十分なような気がしました。

・双六から三俣蓮華までの稜線は,花に彩られたカール地形が展開され,実に好ましいものでした。

・三俣蓮華に着いたところで昼食をとろうとしたところ,再び雨が降り始め徐々に強くなってきました。三俣山荘まで下り,この日の行程を終えました。T君は双六小屋へ戻るつもりだったようですが,もし天候が回復すれば鷲羽へ行くことも視野に入れて,三俣山荘泊りとしました。

・雨はますます激しくなってきました。午後4時の気象通報では,なんと,北へ移動していたはずの熱低が,能登半島付近に。一体,何を考えてうろついているのでしょうか?それにしても,しっかりしろ!太平洋高気圧。テレビのニュースでは,丹沢での水難事故が繰り返し流れていました。

・第4日,やはり雨でした。やる気が出ません。そんな中,一瞬周囲の霧が取れて,鷲羽岳が見事な姿を現しました。実に雄大でした。

・見切りをつけて,双六小屋方面へ出発します。今度は巻き道を辿ります。見上げた三俣蓮華のカールもまたみごとでした。登山道は至るところで沢となっていました。

・双六小屋で3時間の大休止をとり,雨が止んだところで鏡平山荘へ向けて歩き出しました。瞬間,燕岳方面が見えましたが再び濃密なガスが覆ってきました。

・鏡平山荘のおやじさんは,傷心の我々をいたわるように迎えてくれました。夕食をとって少したったとき,ついに雲が切れてきました。そして,槍穂が姿を現しました。これを見れただけでも,慰めになりました。

・第5日,期待して外を見たら,一面の霧でした。雨も再び降ってきました。止みそうもないため,新穂高温泉への下山を急ぐことにしました。

・秩父沢のあたりで,雲が切れてきました。標高にして,2000m以上が雲で覆われている状況でしたが,天候は徐々に回復してきました。皮肉なもんです。新穂高温泉についた頃には晴れ間ものぞいてきました。こうして登山は終わりました。

・雨の中,撮影はほとんどできませんでしたが,以下の花が印象に残っています。
ミソガワソウ・・・秩父沢付近から稜線にかけて
ミヤマアキノキリンソウ・・・登山口より至る所に咲いていて,高所ほど丈が小さい
ハクサンフウロ・・・双六付近に群落として見られる
ミヤマリンドウ,タカネツメクサ・・・双六〜三俣蓮華に見られる
ウサギギク,ヨツバシオガマ,シラネニンジン・・・至る所に飽きるほど咲いている

G総括 ・天候がすべてでした。ここまで悪いとは・・・確かに,山の天気には雨がつきものでこれも普通の姿であることは,理屈としてはわかっていても,せめて1日くらい晴れてくれればとの思いで一杯です。

・そんな中,時折姿を見せた鷲羽岳の雄大さが胸に焼き付いています。特に,三俣山荘から見た姿が圧倒的でした。

・至るところに現れるカール地形もまた見事で,雨に煙る姿はそれなりに味わいがありました。この山域の魅力を認識しました。

・当初は黒部五郎岳を経て太郎兵衛平へ抜ける予定でしたが,まずは双六岳からの展望を当てにしていたので,諦めました。結局,それすらもかないませんでした。

・行程を1日延ばしたことにより鏡平からの槍穂を見ることができたので,まあよしとしましょう。

・憧れの黒部五郎はまったく見ることができませんでした。下山の頃には,鷲羽と合わせた再訪の計画が頭の中を巡り始めていました。

・ここ数年,お盆の時期は意外と天気が悪いようです。太平洋高気圧が多少弱まる時期に当たっているのかもしれません。ベストはやはり「梅雨明け十日」でしょうか。北アルプス山行は時期をFIXしなければならず,まとまった休みがとれないサラリーマンにとってはつらいところです。

H気付事項 ・鏡平までのコースには丁寧に石が敷き詰められており,開拓者の労苦が偲ばれます。しかし,雨天時の下山では,滑って足を挫かないように気をつける必要があります。

・秩父沢を過ぎてひと登りすると,岩が累々と積み重なった広いガレ場に出ます。展望がよいので,休んでいる人が多い。不安定な石が多いようなので,ここでの休憩は避けた方がよいと思います。

・今回ほど天気予報を気にし続けた山行はありません。今の山小屋はテレビがあって便利ですね。ところが,NHK名古屋放送局のローカルニュース(PM7時前)では,なんと「山の天気」がないのです(鏡平山荘,双六小屋が該当,三俣山荘は長野県の詳細な予報が入る)。名古屋には山登りの文化がないんですかね。苛立っているのは,天候が悪い以前に登山愛好家の人権が無視されたからです。

 

早朝,双六小屋付近より笠ヶ岳を望む
(このあと霧に包まれた)

双六小屋付近からの鷲羽岳の姿
(同左)

タカネツメクサ

シラネニンジン

鏡平より望む槍ヶ岳

大キレットと穂高連峰(鏡平より)

 

 


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